Cypress統合で生まれた事業部がけん引、InfineonがIoTで攻勢:買収完了から3年(1/2 ページ)
Infineon TechnologiesによるCypress Semiconductorの買収が完了して3年が経過した。この買収により、Infineonが特に強化を狙ったのがIoT(モノのインターネット)向けビジネスだ。同分野における統合の成果はどうなのか。インフィニオン テクノロジーズ ジャパンのバイスプレジデントでコネクテッド セキュア システムズ事業本部 事業本部長を務める針田靖久氏に聞いた。
「相乗効果を生みやすい」とされたM&A
Infineon Technologies(以下、Infineon)によるCypress Semiconductor(以下、Cypress)の買収が完了したのは、2020年4月のことだ。パワー半導体に強みを持つInfineonと、NOR型フラッシュメモリや無線通信ICなど広範なポートフォリオを持つCypressは、製品の重複が極めて少なく、相乗効果を発揮しやすいM&Aだと分析された。とりわけ、無線ソリューション事業を2011年にIntelに売却していたInfineonにとって、Cypressの無線通信ICは、成長市場であるIoT(モノのインターネット)分野を狙う上で欠かせないポートフォリオだった。
統合から3年が経過した現在、Infineonは、オートモーティブソリューションを手掛ける「Automotive(ATV)」、インダストリアル向け製品を扱う「Green Industrial Power(GIP)」、パワーおよびセンサーを手掛ける「Power & Sensor Systems(PSS)」、そしてコネクティビティとセキュリティを手掛ける「CSS(Connected Secure Systems)」の4つの事業部門を持つ。
この中で、旧Cypressのメモリ、非車載用マイコン、無線通信ICを扱う事業部が、Infineonのセキュリティ事業部に統合されて生まれたのがCSSだ。CSSはマイコン、無線通信IC、セキュリティソリューションの3つを主軸とし、産業用IoT、スマートホーム、ゲームやウェアラブル機器などの民生用IoT機器、支払い端末、ID認証などの分野に向けて、ソリューションを展開する。
CSS(Connected Secure Systems)事業部の主要製品およびアプリケーション。「Compute」には非車載用マイコンとメモリが含まれている[クリックで拡大] 出所:インフィニオン テクノロジーズ ジャパン
Infineonの2022年度の全社売上高は142億1800万ユーロで、CSSが占める割合は13%と、4事業部門の中では小さい。だが、年率10%で売上高成長を目指すInfineonにとって、CSSが担う役割は大きい。同社が、IoT市場を成長ドライバーの一つに据えているからだ。
パワー半導体を扱わない、「ユニークな位置付けの事業部」
インフィニオン テクノロジーズ ジャパンのバイスプレジデントでコネクテッド セキュア システムズ事業本部 事業本部長を務める針田靖久氏は、「CSSはパワー半導体を扱わず、IoTをターゲットとしたユニークな位置付けの事業部」だと語る。「マイコン、ワイヤレス、セキュリティが主要製品なので、ソフトウェア技術が深く関わってくるのもCSSの特徴だ。そのため当社のソフトウェアのエキスパートは、主にCSSに集約されている」(針田氏)
CSSの売上高は、ほぼセキュリティソリューションのみだった2018年度や2019年度に比べると、2022年度は約3倍に増加し、18億2200万ユーロに成長している。製品カテゴリー別の売上高比率は、セキュリティが約45%と最大で、マイコンは約20%、残りがコネクティビティだ。「統合による相乗効果で、それぞれが以前よりも伸びている」(針田氏)
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