34本の信号配線を差動2対に集約するシリアルトランシーバー:基板間接続が超シンプルに(1/2 ページ)
ザインエレクトロニクスは、センサー信号や制御信号の配線を統合できるシリアルトランシーバーIC「THCS253/THCS254」の量産出荷を開始した。30本を超える信号ラインを、わずか2ペアの差動信号ラインに置き換えることができるため、システムの小型化や低コスト化につながる。
ミックスドシグナルLSIの開発を手掛けるザインエレクトロニクスは2023年7月、センサー信号や制御信号の配線を統合できる同社のシリアルトランシーバーIC「IOHA:B(アイオーハブ)」の新製品として、「THCS253/THCS254」を開発、量産出荷を開始した。産業機器の基板間接続をよりシンプルにすることで、基板やシステムの小型化、低コスト化を実現する。THCS253/THCS254の違いはパッケージで、THCS253は9×9mmのQFN64を、THCS254は7×7mmのQFN48を採用している。サンプル単価はいずれも680円。
THCS253/THCS254は、トランスミッター(送信回路、シリアライザ)とレシーバー(受信回路、デシリアライザ)を1チップに集積したもの。同製品を、システム本体の基板と、センサーやタッチパネル、NFCなどの無線チップを搭載した個別機能基板に用いることで、基板間を接続する多数の信号ラインをわずか2ペアの差動信号ライン(4本の信号ライン)に置き換えることが可能だ。
THCS253であれば、最大34本の信号ラインを2ペアの差動信号ラインに集約できる。これにより、ケーブルの本数を減らせるだけでなく、コネクターの数も減らせる。基板サイズやシステムの小型化、低コスト化を実現できる他、信号ラインを減らせるので放射ノイズの低減にもつながる。
ザインエレクトロニクスは、「基板やシステムの小型化は、本体の軽量化にもつながる。ドローンなどバッテリー駆動の機器であれば、より長時間動作できるようになる。コネクターの数が少なくなれば、接続作業が簡素化し、コネクターの接続ミスも減る。THCS253/THCS254は、基板間接続だけでなく、生産工程の簡略化や短縮にも貢献できる」と説明する。
他にも、FFC(フレキシブルフラットケーブル)であれば、信号の数が減るのでFFCの幅を小さくできる。それにより、プリンタなどFFCを使う電子機器の設計の自由度が上がる。測定/検査装置、分析装置などでセンサー基板と制御基板の接続に用いれば、高価な細線同軸ケーブルの本数を減らすことができるので、低コスト化を実現できる。
波形整形機能の搭載で、ケーブル長を伸ばせる
今回の新製品は、受信回路側に、伝送信号の波形整形を行う機能を搭載していることも特長だ。
一般的に、信号波形は伝送の過程で崩れていく。ある一定の伝送距離を超えると波形が崩れ、受信側が「信号」として認識できなくなってしまう。つまり、受信側が「信号」として認識できる距離しか伝送できない、ということになる。
THCS253/THCS254では、受信回路側で波形を整形することで、通常は1m程の伝送距離を約10mまで延長できる。これにより、工場や倉庫で装置/システムをより柔軟なレイアウトで配置できるようになる。
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