「SMICの5nmプロセスへの道筋は良好」と観測筋:米国の対中戦略を揺るがす躍進(1/3 ページ)
中国のSMICは、今後数年以内に5nm以下の微細プロセスによる半導体チップ製造を実現し、再び米国に対抗する可能性があるという。業界観測筋が米国EE Timesに語った。
業界観測筋が米国EE Timesに語ったところによると、中国のSMICは、今後数年以内に5nm世代以下の微細プロセスによる半導体チップ製造を実現し、再び米国に対抗する可能性があるという。
最近、中国最大の半導体メーカーであるSMICが、7nmプロセスによる製造を実現したことが明らかになった。これは、米国政府が競争相手国を14nmプロセスで足止めするために設定した、”超えてはならない一線”を越えたことになる。かつてTSMCの主任法律顧問を務めた経歴を持つDick Thurston氏によると、現在広く報じられているSMICの躍進は、輸出規制やブラックリストを利用して中国の技術進展を阻止しようとする米国の戦略をゆるがすものだという。
SMICの技術発展、TSMC出身の共同CEOが貢献
同氏はEE Timesの取材に応じ、「私は、SMICが7nmプロセスによる製造を実現すると確信していたし、さらにEUV(極端紫外線)露光装置なしで5nmプロセスを達成するに違いないとみている」と述べている。
米国は、中国・上海市に拠点を置くSMICに対し、オランダのASMLがほぼ独占的に製造しているEUVリソグラフィ装置を使用することを禁止した。匿名を条件にEE Timesの取材に応じたTSMCの元エンジニアによれば、TSMCは、同社にとって初となる7nmプロセスを、EUV装置を使用せずに実現したという。このエンジニアは「SMICが、旧型のDUV(深紫外線)露光装置でダブルパターニングを使用して7nmプロセスを達成できたことは、驚くようなことではない」と述べている。
Thurston氏は2009年に、SMICによる産業スパイや知的財産権の侵害に対し、TSMCを法的勝利に導いた人物だ。同氏は2023年9月、「TSMCが、SMICの最新のブレークスルーに対し、SMICを相手取って訴訟を起こすとは思わない」と述べている。
それでも同氏は、「TSMCは確実に、このような現状を“監視”しているだろう」と述べる。
世界最大のファウンドリーであるTSMCは現在、3nmチップを製造しており、SMIC最新のプロセス技術の約5年先を進んでいる。米国で7nmプロセスチップを製造可能な半導体メーカーは、唯一Intelだけだ。
Thurston氏によると、中国ファウンドリーのプロセス技術における進展は、TSMCの元同僚で、現在はSMICの共同CEO(最高経営責任者)を務めているLiang Mong-song氏の功績によるものだという。
Thurston氏は、「Mong-song氏ほど優れた科学者やエンジニアはいない。同氏は、私が半導体業界でこれまで見てきた中でも実に優秀な頭脳の持ち主の1人だ」と述べる。
「Mong-song氏がTSMCを去ったのは、車載用/医療用エレクトロニクスの分野でより多くの顧客に対応すべく同社の技術ポートフォリオを拡大することよりも、ムーアの法則を推し進めることを望んだからだ」(Thurston氏)
米国は、中国に規制をかけるのではなく、むしろ中国との競争を重視する必要があるだろう。
Thurston氏は、米国下院議員であるPat Ryan氏(民主党、ニューヨーク州)と共に、同州ハドソンバレーの半導体製造の復活を支援している。同地域では数年前に、IBMが半導体製造から撤退している。
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