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キオクシアとWDの統合破談はポジティブに捉えるべき大山聡の業界スコープ(71)(1/2 ページ)

キオクシアとWesternDigital(ウエスタンデジタル/以下、WD)の統合話は破談になったようだ。なぜ破談にいたったのか。その背景を考えてみたい。

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 本連載前回記事で、キオクシアとWesternDigital(ウエスタンデジタル/以下、WD)が統合しようとしていることについて述べた。実際にその動きはあったわけだが、統合話は破談に終わったと、各メディアが2023年10月下旬に一斉に報道した。しかし11月に入ってからは、本件に関する報道はほとんどなく、2社統合の件も破談の件も、すでに過去の話のように扱われているように感じられる。筆者としては、どうしても気になっていることがあるので、ここで触れることにする。

破談の原因

 各メディアの報道によれば、統合後の新会社は、キオクシアの経営陣が中心になって日本の製造拠点を運営する形態は変わらないが、登記上の本社を米国に置き、将来的にはNASDAQに上場する、という事実上の米国籍企業になる予定だったようだ。日本政府としては、日本の半導体産業を再燃させるべく、さまざまな戦略を打ち出している。その中で、日本政府は統合新会社が米国籍になることを容認していたのか、いささか気になる点ではある。

 そして今回の統合話が破談に終わったのは、キオクシアに間接的に出資していたSK Hynixがこれに反対したからだ、と各メディアで報道されている。当事者であるキオクシアもWDも統合話について公式には何も発表しておらず、両社の見解を伺い知ることはできない。各メディアがそのように報道しているだけなのだが、筆者としてはこれに強い違和感を覚える。

 SK Hynixが2社統合に反対するのは当然である。統合新会社はNAND型フラッシュメモリ市場における首位Samsung Electronicsに迫る実績を持つことになり、現在2位のSK Hynixは3位に転落してしまう。そもそも同社がキオクシアに(米投資ファンドである)Bain Capital経由で間接的に出資しているのは、キオクシアとWDの統合を阻止することが目的だった、とも言われており、出資を決めた6年前からその意思は変わっていないはずである。

 にもかかわらず、統合話は進められていた。上場のメドが立たない現状を考えれば、Bain Capitalとしては別の手段で早くEXIT(イグジット/投資回収)したかっただろうし、当事者であるメーカー2社からも反対の声は上がらなかったのだろう。少なくとも「2社間の不協和音によって破談」という報道は一切なかったので、統合に反対していた関係者はSK Hynixだけ、という状況だったことが分かる。

「SK Hynixの反対」とは思えない

 では、統合推進派の方々は、この状況を理解していたにもかかわらず、反対派に対して何の策も講じずにメガバンクや日本政策投資銀行を巻き込み、新会社設立の準備をしていたのだろうか。そのようなことは常識的に考えられない。反対派であるSK Hynixを巻き込んで十分に議論されていたはずである。不承不承であれ、交換条件付きであれSK Hynixの何らかの同意を得られなければ、メガバンクや日本政策投資銀行を巻き込む段階には到達できなかっただろう、というのが筆者の推察である。

 「新会社を設立するので、融資してください。ただしこの話はSK Hynixに拒否される可能性があります」

 こんな打診があったら、メガバンクの融資担当者はどうするだろうか。「ではSK Hynixを説得してから来てください」とお引き取りいただくのではないだろうか。メガバンク各行からの融資確約が取れた、という報道があったことからも、SK Hynixを何らかの形で説得できた、と考えるのが自然である。

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