検索
連載

imecも全幅の信頼、Rapidusの「成功の定義」とは何か湯之上隆のナノフォーカス(68)(1/7 ページ)

imecや経済産業省など、Rapidusの支援を公言する組織/企業は多い。さらに、米TenstorrentやフランスLetiなど、Rapidusとパートナーシップを締結する企業や機関も増えている。それはなぜなのか。2023年11月に開催された「ITF(imec Technology Forum) Japan」で見えてきたその理由と、Rapidusにとっての「成功の定義」をあらためて考えてみたい。

Share
Tweet
LINE
Hatena

「imec Technology Forum」に初参加


連載一覧はアイコンをクリック

 2023年11月9日、都内のホテルニューオータニで、「ITF(imec Technology Forum) Japan」が開催された。筆者はプレスとして初めてITFに参加した。同イベントは、以下の2部構成となっていた。

1)11:00〜12:30 Exclusive press event(参加はプレスのみ)

  • 約1時間のimecの紹介の後、約30分のimec CEOのLuc Van den hove氏とのQ&A

2)13:30〜18:10 imec Technology Forum

  • Van den hove氏のオープニングキーノートの後、Rapidusの小池淳義社長が講演
  • Van den hove氏、Rapidusの小池社長、経済産業省の野原諭局長によるパネルディスカッション
  • その後、imec関係者、三井化学、レゾナック、西村康稔経産大臣など7件の講演

 第1部のExclusive press eventには20〜30人の記者が参加し、Van den hove氏とのQ&AではRapidusに関する質問が集中した。筆者も、1件質問させて頂いた。

 このQ&Aを通して筆者は、Van den hove氏が、日本という国を重要視しており、技術支援を約束しているRapidusに対しても、全幅の信頼を寄せ、期待していると感じた。そして、なぜそこまでRapidusを信頼するのか、大きな疑問を持った。しかし、この疑問は、第2部で、Rapidusの小池社長の講演を聞いて「なるほど」と納得がいった。

 本稿では、まず、Q&AでVan den hove CEOが、どのようなことを述べたのかを紹介する。その上で、Rapidusの小池社長がどのような講演を行ったかを示す。なお、imecの説明については、本稿の最後に参考資料として紹介する。

 結論を述べると、小池社長の講演は非常に素晴らしく、パッションがあり、それ故にVan den hove氏がRapidusを信頼するとともに期待することにもなったと推察した。

 ただ、2nm世代の最先端ロジック半導体を製造できるかどうかは、プレゼンとはまた別の問題である。従って、Rapidusの行く手には、途轍もなく高いハードルがあることには変わりがない。そして本稿では、Rapidusの成功の定義について論じたい。

imec CEOとのQ&A

 20〜30人ほど参加していたプレスの質問は、Rapidusに集中した。どのようなQ&Aがあったかを、以下に紹介する。


「ITF Japan 2023」でプレスの質問に答えるimec CEOのLuc Van den hove氏(筆者撮影)

――Rapidusが建設する北海道にR&Dセンター―をつくるのか。

Van den hove氏 「Rapidusは、imecの微細化コアプログラムに参画している。そのため、RapidusがEUV露光装置を導入する際に、技術者や研究者を派遣してスムーズな導入に向けた技術支援なども行っていく。Rapidusの近くに、オフィスをつくることになるだろう」

――imecのR&Dセンターは、どこにつくるのか。

Van den hove氏 「日本の半導体メーカー、装置メーカー、材料メーカー、大学など、60の組織と提携している。それらが集中している東京か大阪(またはその両方?)にR&Dセンターをつくることを検討している。どこにつくるかは、まだ決定していない」

――Rapidusはimecと米IBMとの協業により、2nmの量産ができると思うか。

Van den hove氏 「日本にはソニーやキオクシアなどの半導体メーカーがあり、半導体の量産ノウハウがある。また、日本政府がRapidusを強力に支援する。ImecはRapidusに期待している」

 筆者も以下の質問をさせて頂いた。

――Rapidusの技術者がimecに行って、imecが行っている2nmの技術開発に参加するのは理解できる。しかし、imecが特定の国(つまり日本)の、特定の企業(つまりRapidus)のために、R&Dセンターをつくるということは理解できない。世界的なコンソーシアムのimecが、日本のRapidusのためだけにR&Dセンターをつくるということは、コンソーシアムの役割から外れているのではないか?

Van den hove氏 「imecは日本の装置メーカー、材料メーカー、大学など、60の組織と提携している。従って、imecにとって日本は非常に重要な国である。また、imecの先端半導体の開発に参画しているRapidusの取り組みは非常に挑戦的なものであり、imecはRapidusを支援する。imecは、日本半導体産業を活性化させたいと考えている」

 約30分のQ&Aから、Van den hove氏が、日本をとても重要な国と位置付けており、技術支援を約束しているRapidusには、大きな信頼をもち、期待をかけていることが分かった。そして筆者は、同氏がなぜそこまでRapidusを信頼し、期待をするのかと大きな疑問を持った。その謎は、第2部におけるRapidusの小池社長の講演を聴くことによって、解くことができた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る