生成AIの台頭で高まる「光電融合技術」への期待、NTTが意気込みを語る:「SEMICON Japan 2023」で講演(1/2 ページ)
半導体関連技術の総合展示会「SEMICON Japan 2023」にて、「日本半導体産業の発展に向けて 半導体を取り巻く先端開発」と題した講演が行われた。本稿ではその中から、NTTイノベーティブデバイス 本社 代表取締役副社長の富澤将人氏、経済産業省 商務情報政策局 情報産業課長の金指壽氏の講演内容を紹介する。
「SEMICON Japan 2023」(2023年12月13〜15日/東京ビッグサイト)にて、「日本半導体産業の発展に向けて 半導体を取り巻く先端開発」と題した講演が行われた。NTTイノベーティブデバイス 本社 代表取締役副社長の富澤将人氏は同社が取り組む光電融合技術の開発の進捗について、経済産業省 商務情報政策局 情報産業課長の金指壽氏は日本政府の半導体業界支援の方向性について語った。
NTT、光電融合技術で「ムーアの法則」の先へ
NTTイノベーティブデバイスの富澤氏は、NTTグループが注力する光電融合技術のメリットや展望を紹介した。NTTイノベーティブデバイスは光デバイスの設計/製造やLSIの設計を手掛けている。
「ムーアの法則」が限界に近づくにつれ、微細化以外の方法でも半導体や電子デバイスの性能を向上させる必要が生じ、パッケージング技術の進展による超高密度実装などさまざまな方法が模索されている。光電融合技術もその一つだ。電気回路と光回路を融合する技術で、省電力化/低遅延化への貢献が期待される。
光電融合技術の活用先として富澤氏はデータセンターを挙げた。注目を集める生成AI(人工知能)の活用などにおいて、現状では1カ所のデータセンターにデータが集中している。しかし電力供給が集中することが問題視され、今後は分散化が進む見込みだ。そうなると、遠隔地で膨大な容量のデータをやりとりする必要が出てくる。そこで省電力/低遅延に強みを持つ光電融合デバイスの活用に関心が高まっている。
NTTイノベーティブデバイスによる光電融合技術開発は、長距離伝送から短距離伝送へ、通信領域からコンピューティング領域へと進んでいく予定だ。通信局舎間、データセンター間の伝送への光電融合技術の適用は既に始まっていて、2025年ごろにボード間、2028年ごろにデバイス内、2032年ごろには素子間での伝送に用いたいとしている。
NTTイノベーティブデバイスが現在手掛ける光電融合デバイスとしては、第1世代にあたる「COSA(Coherent Optical Sub-Assembly)」、第2世代にあたる「CoPKG(光・電子コパッケージ)」があり、いずれも通信用途向けだ。2025年には第3世代として「光エンジン」を商用化予定で、データセンター内での使用を想定する。2028年には第4世代、2032年には第5世代の商用化を計画していて、半導体パッケージ内に組み込んで使用される見込みだという。第4/第5世代デバイスの開発に向けては、光導波路の設計技術の向上、光調芯/検査などの量産技術の開発と自動化などが課題となる。
富澤氏は「光電融合デバイスはこれまで通信領域で用いられてきたが、これからはコンピューティング領域への進出を目指す。さらには、コンシューマー向け用途で活用される可能性も十分にある」と意気込みを語った。
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