車載パワーデバイスの出力密度向上手法:福田昭のデバイス通信(438) 2022年度版実装技術ロードマップ(62)(1/2 ページ)
今回は、第3章第3節第4項「車載パワーデバイス」から、「パワーデバイスの発展」を解説する。
パワーデバイスとは何か
電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要を本コラムの第377回からシリーズで紹介している。
本コラムの第433回から、第3章「電子デバイスパッケージ」の第3節(3.3)「各種パッケージ技術動向」を報告してきた。前回までは、第3章第3節第2項(3.3.2)「ウェハレベルパッケージ(WLP)、パネルレベルパッケージ(PLP)、部品内蔵基板」の第2目「3.3.2.2 FO-WLP(Fan Out-Wafer Level Package)、FO-PLP(Fan Out-Panel Level Package)、部品内蔵基板)」の概要を3回にわたって説明してきた。
今回は第3章第3節第4項(3.3.4)「車載パワーデバイス」の概要をご報告する。この項は「3.3.4.1 車載エレクトロニクスの開発トレンド」「3.3.4.2 電動化に向けた車載機器」「3.3.4.3 パワーデバイスの発展」の3つの項目で構成される。本稿では「3.3.4.3 パワーデバイスの発展」を簡単に解説する。
「パワーデバイス」とは、インバーターやコンバーターなどの電力変換機器およびそれらに搭載される半導体素子を指す。機能別にはパワートランジスタ(MOSFETやIGBTなど)、ダイオード、サイリスタ、トライアックなどの半導体素子があり、形態別には半導体素子(ディスクリート)、パワーモジュール(複数の半導体素子を1個のパッケージに収容したデバイス)、インテリジェントパワーモジュール(IPM:制御回路や駆動回路、保護回路などと半導体素子をモジュール化したデバイス)がある。
常に求められる出力密度の向上
パワーデバイスは過去から継続して、出力密度(単位体積当たりの出力)の向上が求められてきた。1980年前後には、1cc(1cm3)当たりの出力は0.1Wにすぎなかった。それが1990年代半ばには1Wとおよそ10倍になり、2010年代には10Wとさらに10倍に向上した。
出力密度を高める方法は基本的に3つしかない。1つは出力電流を高めること、もう1つはスイッチング周波数を高めること、3つ目はヒートシンク(放熱部品)の寸法を小さくすることだ。これらの手法はいずれも単純には動作温度の上昇を招き、デバイスの寿命を縮める。そこで何らかの工夫が対策として必要となる。
第3章第3節第4項(3.3.4)「車載パワーデバイス」から、パワーデバイスの出力密度を高めるための課題とその対策をまとめた図面[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)
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