どうする? EVバッテリー リサイクルは難しい、でもリユースにも疑問:「再利用」は分かりやすいアイデアだが(1/2 ページ)
EV(電気自動車)における大きな課題の一つはバッテリーだ。リチウムイオンバッテリーのリサイクル技術が確立されていない中、“中間ステップ”としてリユースも提案されている。だが、リユースは本当に効果的なのだろうか。
バッテリー式電気自動車やハイブリッド車などに搭載されている大型バッテリーパックが消耗すると、当然の問題となるのがバッテリーをどうするかということだ。単に廃棄するのは、環境的な観点からはもちろん、バッテリーに含まれる物質(リチウムやコバルトなど)には限りがあり、見つけ出して抽出することがますます困難でコストが掛かるようになっているため、現実的な観点からも容認できない。
バッテリーにはさまざまな規格があるが、一般的には、容量が初期値の80%に低下すると、本来の用途に対しては“消耗した状態”であると考えられる。ただし、自動車に必要な航続距離には十分ではないかもしれないが、据え置き型/定置型アプリ―ションや制約的な用途には十分対応できる。
リチウムイオン電池の需給予測のギャップ(キロワット時エネルギーベース)から分かるように(図1)、電池の内容物をリサイクルすることは原理上、理にかなっている。これらの予測は個々に異なるが、このギャップが非常に現実のものであることに疑いの余地はなく、廃棄物を最小限に抑え、貴重な内容物を回収するリサイクルは、賢明なアイデアのように思える。
問題は、このようなリサイクルと回収が、技術的にもコスト的にも非常に難しいということだ。具体的には、バッテリーユニットのパッケージ(かなり頑丈である)に関連する問題の他、内部の化学スラリーや、アノードおよびカソード材料などに含まれる、鉱物の分離および抽出に関する課題がある。一言で言えば、「厄介で、エネルギーを大量に消費し、困難で、環境に有害な作業」だ。
整備され成熟した従来の鉛蓄電池のリサイクルチェーンとは異なり、リチウムベースの電池のリサイクルはそれほど簡単ではなく、プロセスやリサイクルチェーンも十分には確立されていない。それでもなお、効率的で費用対効果が高く、安全なリサイクル方法を考案し、実証するために、多くの投資や取り組みが行われている。
その一例として、EV電池のリサイクルを手掛ける米国のRedwood Materialsは資金調達ラウンドで10億米ドルを調達した。Jaguar Land Roverと韓国の複合企業であるSK Groupは、リチウムイオン電池のリサイクルを手掛ける米国のAscend Elementsに3億米ドル以上を投資している。リチウムイオン電池のリサイクル事業を行うカナダのLi-Cycle Holdingsにも、複数の企業が投資している。これらの企業は既に、“書面上の計画”だけではなく、パイロット事業や小規模な事業を進めている。
一般的に多くの進歩、特にバッテリー関連の進歩では、研究室からパイロットプラント、さらに本格的な量産へと規模を拡張する際の実績が特に不安定であるというジレンマがある。研究室やパイロットラインでは“革新的”であったバッテリーのアイデアの多くは、量産まで確実にコスト面での問題をクリアしてスケールアップすることができなかった。バッテリーのリサイクルでは、構造や成分、混合物に不明な点や一貫性のない点が多く、はるかに大きな課題があるため、バッテリー製造と比較するとさらに悪い状況である。
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