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8億ユーロの大型投資 半導体で主導権確保を急ぐ欧州FD-SOIなどの試作ライン設置で(1/3 ページ)

欧州が半導体での主導権確保に向け取り組みを加速している。CEA-Letiは2024年6月、先端半導体のパイロットラインを立ち上げるプロジェクト「FAMES」を発表した。8億3000万ユーロを投資する計画だ。

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 フランスの研究機関であるCEA-Letiは2024年6月24日(現地時間)、欧州の主権を確保するために、不揮発性組み込みメモリ、3D(3次元)インテグレーション、RFコンポーネント、電力管理ICを備えるアプリケーション向けのFD-SOI(完全空乏型シリコンオンインシュレーター)のパイロットラインである「FAMES」の立ち上げを発表した。

「FAMES」のキックオフ
「FAMES」のキックオフ[クリックで拡大] 出所:CEA-Leti

 FAMESパイロットラインの総予算は8億3000万ユーロで、CEA-Letiは7億2800万ユーロを受け取る。残りは他のResearch and Technology Organization(RTO)と研究パートナーに投入され、RTOと研究パートナーはそれぞれの専門知識を提供する。資金の半分は参加加盟国から提供され、残りの半分はChips Joint Undertaking(半導体共同事業)から提供される。

 FAMESは、「European Chips Act(欧州CHIPS法)」に従って、研究と経済的に実現可能な大量生産の間のギャップを埋める一助となる。FAMESは、新しいアイデアを小規模でテストし、デモ機やプロトタイプを構築するためのプラットフォームとして、欧州の応用研究において重要な役割を果たすと期待される。EE Times Europeは、CEA-LetiのJean-Rene Lequepeys氏にインタビューを行った。

「FAMES」で欧州は大きく前進

CEA-LetiのJean-Rene Lequepeys氏
CEA-LetiのJean-Rene Lequepeys氏

EE Times Europe なぜFAMESのパイロットラインが大きな前進となるのか?

Jean-Rene Lequepeys氏 マイクロエレクトロニクス分野で重要な活動を行っている国は全て、現在ではマイクロエレクトロニクスを主権技術として認めている。それ故、各国政府はCHIPS法のような政策を通じて同分野を支援してきた。これは、米国や中国、日本、韓国、台湾、フランス、ドイツなどの先進国に当てはまる。さらに、インドやベトナム、マレーシアなどの発展途上国でも同様のことが起こっている。

 欧州CHIPS法は、欧州全体の半導体産業を促進するため、欧州にとって大きな意味を持つ。資金の大部分は工場に直接投入されるが、既に生産モードにある工場に提供され、税制優遇措置を通じて新しい工場の設立を促進する。また、資金の一部は研究所に提供されるが、研究所に配分された資金は、現在の研究開発と、将来のより良い研究開発の基盤構築に充てられる。長期的な成長にとって、そのどちらも重要である。半導体業界では、研究開発の多くが産業利用に向けた次世代技術の準備に重点を置いている。

 欧州CHIPS法には、研究室と工場の間のギャップを埋めることを目的とした「Chips for Europe」と呼ばれるイニシアチブがある。これは、1967年にCEA-Letiが設立されて以来のモットーである。EUは、このイニシアチブを支援するために33億ユーロを割り当てたが、米国が「CHIPS法(正式名称:CHIPS and Science Act)」の一環として研究開発に割り当てた110億米ドルと比較してほしい。

 欧州では、Letiやベルギーの研究機関であるimec、フィンランドのVTT、ドイツのFraunhoferなどの大手RTOに見られるような、既存のプラットフォーム上にパイロットラインを構築する手法が取られている。パイロットラインは、新しい先端半導体技術をより高いレベルに成熟させる。

 この資金が、産業界に直接ではなく、研究センターに提供されるという事実は、欧州の研究に対する明確な信頼の表れである。政策立案者は、画期的な変化と長い目で見た見返りをもたらす長期的な研究開発にかなりの投資することを選択した。

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