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「省エネなAI」に効く? アナログチップの可能性IBMや新興企業も開発に取り組む(1/2 ページ)

AIの普及によりデータセンターの消費電力の増大が課題になっている。“省エネのAI”を実現する上で鍵になりそうなのがアナログチップの活用だ。

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 AI(人工知能)はさまざまな産業に革命をもたらし、画期的なデータ処理や意思決定、自動化の進歩を実現してきた。しかし、AI、特に機械学習(ML)やディープラーニング(DL)アプリケーションでは膨大な計算が必要となり、エネルギー消費や環境の持続可能性に関する大きな懸念が生じている。

 例えば、AI技術は現在、世界の電力使用量の約7%を消費している。これは、インドの年間電力使用量に相当する。AIが拡大し続ける中、AIハードウェアに対するより持続可能なアプローチを模索することが不可欠である。アナログチップの開発と活用は、有望な手段となる。

 AIアプリケーションの急激な成長によって、エネルギー消費量は大幅に増加している。その主な要因は、必要とされる膨大な計算リソースである。現在のAIシステムのバックボーンである従来のデジタルコンピューティングは、特にエネルギーを大量に消費し、二酸化炭素排出量の増加を招いている。AI計算の中核をなすデータセンターは現在、世界の電力の約1%を消費しているが、現在の傾向が続けば、この数字は今後数十年で3%から8%に上昇する可能性がある。

 AIが環境に与える影響には、エネルギーの使用だけでなく、電子ハードウェアの製造と廃棄があり、重大な環境被害をもたらす電子廃棄物(e-waste)の要因になっている。大規模データセンターの冷却要件は、水の使用と環境の悪化に拍車を掛けている。こうしたことを考慮すると、エネルギーと資源の消費を削減し子廃棄物を最小限に抑える持続可能なAI 技術の必要性が浮き彫りになってくる。持続可能なAIとは、エネルギー効率の高いハードウェアや、消費電力を抑える最適化されたアルゴリズムの開発などを指す。エネルギーを大きく節約できる可能性を秘めたアナログチップは、こうした課題に対する実行可能な解決策となる。

IBMやスタートアップが取り組むアナログチップの開発

 IBMは、AIアプリケーション向けアナログチップ開発の最前線に立ち、脳に着想を得た設計でイノベーションを先導してきた。IBMのアナログチップは、アナログ相変化メモリ(PCM)技術を採用し、従来のデジタルチップと比べてエネルギー消費を大きく抑えて動作する。PCM技術は、結晶状態とアモルファス(非晶質)状態の間で材料相を変化させて、高密度ストレージと高速アクセス時間を実現する。これは、効率的なAIデータ処理に不可欠な特性である。IBMの設計では、PCMは人工ニューラルネットワークのシナプス荷重をエミュレートして、エネルギー効率の高い学習と推論プロセスを促進するために採用されている。

 IBM以外にも、さまざまなスタートアップや研究機関がAIにおけるアナログチップの可能性を前進させている。米国テキサス州オースティンを拠点とするスタートアップであるMythicは、メモリと計算機能を融合したアナログAIプロセッサを設計した。AIタスクをメモリ内で実行できるため、データ移動を最小限に抑え、エネルギー効率を高めることができる。

 米国カリフォルニア州レッドウッドシティのRain Neuromorphicsは、生物学的ニューラルネットワークを模倣するように設計されたアナログチップを使用したニューロモーフィックコンピューティングに注力している。

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