4K映像をスマートグラスで! 従来比10倍高速なレーザー制御デバイス:スパッタリングで大量生産にも対応(3/3 ページ)
TDKは、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)薄膜を用いたスマートグラス用可視光フルカラーレーザー制御デバイス「Active-PIC by LN(Active Photo Integrated Circuit by LiNbO3)」を発表した。従来比で10倍高速にレーザーを制御できるため、4K(2160p)の高解像度映像にも対応できるという。
スパッタリングで大量生産に対応
Active-PIC by LNは、その製造方法にも特徴がある。LiNbO3を用いたデバイスの製造は一般的にバルク結晶を用いて行われているが、バルク結晶の大きさに限界があるため大口径化が難しく、民生機器などの大量生産には適さない。一方、Active-PIC by LNは量産を意識し、スパッタリングでLiNbO3薄膜を形成している。単結晶を用いないため大口径化しやすく、大量生産が可能だ。さらに、TDKが強みとする薄膜作成技術によってスパッタ膜の結晶性の課題も克服したという。
3〜5年後に量産が目標 データセンターなどへの応用も
CEATEC 2024のTDKブースでは、Active-PIC by LNでレーザーの色の切り替えを行うデモンストレーションを紹介する。さらに、従来の技術でQDレーザと共同開発した網膜直接投影型スマートグラスについても、MEMSミラーに改良を加えて高解像度化したものを展示予定だ。
TDKは今後、2025年以降にActive-PIC by LNのサンプル提供を開始し、3〜5年後をめどに量産化することを目指している。その際は4K映像の投影を実現する計画だという。
さらに、大量生産が可能なスパッタリング方式でLiNbO3薄膜を作成した実績は他分野にも応用可能だとしていて、データセンターでの高速光通信や生成AI(人工知能)関連デバイスにおける高速光配線など、スケーラビリティが重要な分野への展開も考えられるという。
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