世界最大級のパワエレ展示会「PCIM 2024」で見た最新動向:EE Exclusive(6/10 ページ)
世界最大規模のパワーエレクトロニクス専門展示会「PCIM Europe 2024」が2024年6月11〜13日、ドイツで開催された。本稿ではEE Times Japan記者が現地で取材した業界の最新動向および技術などを紹介する。
独自モールドタイプモジュールで車載SiCの主戦場へ挑む
重要な技術の3つ目として挙げたのが、ロームが同日発表した2in1仕様のモールドタイプSiCパワーモジュール「TRCDRIVE pack」だ。
TRCDRIVE packは300kWまでのxEV(電動車)用トラクションインバーターに向けたもの。xEVにおける各アプリケーションの市場規模(下図)をみると、トラクションインバーターはその大半を占める「車載SiCの主戦場」となっているが、同社は「これまでロームには競争力があるモジュールがなかった」と説明。今回、小型化や高い電力密度、実装工数削減、高い生産性といった特長を有するフルSiCモジュールを開発したことで、この主戦場でのシェア拡大を図っていく。
TRCDRIVE packの最も大きな特長は、「Press fit pin」を用いた制御用信号端子をモジュール上面に備えている点だ。ゲートドライバー基板を上面からプレスするだけで接続可能となり、実装工数の削減につながるという。Press fit pinはケースタイプモジュールでは広く用いられているが、モールドタイプで実現するためには、リードフレームにピンが実装された状態で樹脂封止する必要があり、ピン間の公差(距離の精度)を確保することが難しかったという。ロームは今回、内部のレイアウトと独自のモールド技術によってこの課題を解決したという。また、独自のモールドモジュール構造によって、両面放熱モジュール同等の放熱性能を小型/片面放熱で実現している。
この構造および、内部のチップ間に電流が流れる独自のレイアウト設計の採用などから従来パッケージ技術の場合と比べ28%小型となった。また、低インダクタンス(5.7nH)化も実現し、電力密度は「業界トップクラス」(同社、電流密度19.1Arms/cm2※「BST780D12P4A163」において)を達成していることなどから「xEV用インバーターの小型化に大きく貢献する」と強調している。
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