超低消費電力のアナログAIチップ 小規模LLM動作用も開発中:electronica 2024(1/2 ページ)
Blumindは、ドイツ・ミュンヘンで開催された「electronica 2024」で、超低消費電力のキーワードスポッティング用アクセラレーターチップのテストシリコンを展示した。同社が手掛けるのは、MCUパッケージにも統合できる、アナログAI(人工知能)チップレットだ。
アナログAI(人工知能)チップ企業であるBlumindは、ドイツ・ミュンヘンで開催された「electronica 2024」(2024年11月12〜15日)で、1推論当たり10nJ(ナノジュール)で動作するキーワードスポッティング用アクセラレーターチップのテストシリコンを披露した。
Blumindの共同創設者であるNiraj Mathur氏は米国EE Timesに、「特に喜ばしいのは、昨年(2023年)は当社からの売り込みよりも引き合いの方が多かったことだ。新しい何かが必要だと考えて、具体的に言うと、アナログAIソリューションを求めて、問い合わせをしてくる人が増えた。これは、量産に至る唯一の現実的な道だ」と語った。
自動車やヘルスケアでニーズも
一番のターゲットアプリケーションはウェアラブルデバイスだが、自動車やヘルスケアなどのアプリケーションを念頭に置いてBlumindに問い合わせる顧客もいる。ある顧客からは、路面状況の詳細を計算するために加速度計を備えたタイヤ空気圧監視システム(TPMS)を構築したいという要望があったという。
Mathur氏は、「雪の上や氷の上、砂利の上など、どんな路面を走行しているかが分かれば、自動運転車にとって大きなメリットがある。センサーはタイヤ内部に搭載されているが、バッテリー交換のためにタイヤを開けたくはない。従って、タイヤの寿命までバッテリーを持続させなければならず、そのためには極めて高い電力効率が求められる。これは当社にとって素晴らしいユースケースだ」と語った。
別の潜在顧客は、筋肉の動きによって収集したエネルギーで駆動し、ペースメーカー内のセンサーで心臓からの信号を検出して異常を探すアプリケーションが欲しいと考えていた。Mathur氏によると、このアプリケーションの電力バジェットは、わずか数百ナノワットだという。
2025年に本格量産 チップレットとして提供開始
Blumindは現在、同社初の製品となるアナログキーワードスポットチップを、大手主要顧客と共同でウェアラブルデバイス向けに開発中である。Mathur氏によると、2025年には本格的な量産体制に入る予定で、スタンドアロンのチップ、またはMCU(マイクロコントローラーユニット)と同一パッケージ内で動作する小型チップレットとして提供する予定だという。
「(チップレットは)当社の顧客にとって統合のもう一つの手段であり、多くのMCUメーカーにとって非常に魅力的なものだ。MCUメーカーには当社は競合と映るかもしれないが、そうではない。MCUメーカーが、オプション機能を備えた完全にプログラム可能なMCUソリューションを提供するのに対し、当社は常時稼働のAIに注力している。当社のチップレットは、MCUパッケージに統合することができる」(Mathur氏)
同氏は、「MCUメーカー数社がこのオプションについて検討中だ」と付け加えた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.