長期保管した半導体や、古いデートコード品は使えるのか?(後編):半導体製品のライフサイクルに関する考察(9)(1/3 ページ)
本稿では、十数年以上にわたり適切な環境で保管されていた半導体製品を「使えるのかどうか」、つまり、基板実装後も仕様通りに動作するのかを検証する。
今回は、前回に続き、長期保管された半導体製品について述べる。
長期間保管された半導体は「使用できる」のか
前回は、半導体製品の主に外観に関連した懸念点を説明した。具体的には、「デートコード」、半導体のリード部分に発生する「すずウィスカ」、そして「リードの酸化」を取り上げた。今回は、さらに検証を進める。
基本的に半導体製品は、基板に実装され、システムに組み込まれて、電気を通したのちに、設計通りの動作をすることが要求されている。
つまり、
- 基板にきちんと実装できる
- 実装しても壊れていない
- 実装しても、その半導体製品の電気的仕様を維持している
ことがポイントとなる。
これらが確認できれば、たとえ長期間保管された半導体製品であろうと、継続的に使用できるのではないか。
そこで、これらの項目について実際に長期間保管していた半導体製品を使用し、検証を進めてみた。結果は以下の通りである。
検証方法は、次の3項目を実施した。
- 基板に実装し、はんだぬれ性を確認する
- 基板実装後の半導体製品に対し、X線やSEM解析を行い、内部の状況を観察し、破損などがないことを確認する
- 電気的試験を実施し、データシートの仕様を満足していることを確認する
半導体製品は基板に実装できるのか
基板実装に関しては、経験豊富な外部の組立委託会社のサービスを利用して、組み立てとテスト工程を実施した(この委託会社はISO9001の認証を取得していて、17年以上の経験を有している)
この実験では、鉛フリー表面実装パッケージのテープとリールのデートコードが異なる57種類を在庫からランダムに選択した。デートコードごとに、銅ベースのPCボードに搭載するためのパッドレイアウトを設計した。
その後、組立委託会社にて、標準的な製造工程で片面基板10枚、両面基板10枚を組み立てた。
この時の組立工程の概要は以下の通りである。
a. テープ&リールから自動装填される製品
b. 57個のデートコードのそれぞれを基板上に配置
c. 全ての部品を基板上に設置し、基盤をリフロー炉で処理
d. 基板はリフロー後、検査前に洗浄基板実装後に実装状態を確認
製造工程が完了した後、全ての基板は上述した外部の組立委託会社のサービスを利用して、組み立てとテスト工程を実施した。
製造委託先から入手した最終報告書によると、以下のような結果となった。
- 各部位におけるX線検査による欠陥は無し
- IPC(Institute for Printed Circuits) CLASSIIに準拠したSMT検査において、欠陥は検出されなかった
- 自動光学検査(AOI)は3Dプログラム最終基板検査において、欠陥の懸念は検出されなかった
これらの結果から、実使用上での問題はなさそうだと結論付けられた。ただし、もう少し詳細を確認するために、実装状態にある半導体パッケージについて、プリント基板を斜め方向からX線で撮影し、はんだ付けの状態を確認した。さらに、リード端子部分の切断面のSEM画像を撮影し、はんだペーストの正確な形状と内部構造を明らかにした。これらの確認作業により、未はんだやボイド、浮きなどの確認が可能となる。
この時実装した28ピンPLCCパッケージの実装後の状況をSEMおよびX線解析を行ったところ、以下のような状態であった。
また、14ピンTSSOPパッケージの場合は以下の通りであった。
これらの状態を確認することで、はんだフィレットの構造が堅牢であることが確認された。外部検査と結果が一致していて、PCBへの実装は問題がなかったことがさらに検証された。
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