米中ハイテク冷戦 似て非なる両者の戦略：トランプ氏再選で激化か（1/3 ページ）

第2次トランプ政権の発足を間近に控えた米国。ドナルド・トランプ氏の大統領就任により、米中間のハイテク戦争は激化すると予想される。本稿では、両国の規制やハイテク企業向け戦略を振り返ってみたい。

[Mohammed Tmimi，EE Times]

「激しくはない冷戦」

　米中間の対立は、1冊の本が書けるほど複雑なものであるため、この記事のような概要ではその全容を把握することはできない。しかし、両国のアプローチに関する最新の動向について、いくつか取り上げることはできる。

　米国と中国はここ数カ月の間、技術リーダーシップをめぐり激化する競争の中で、それぞれ異なる戦略を採用している。両政府とも対応を強化しているが、その手法は大きく異なっていて、両国の企業に重大な影響を及ぼす“激しくはない冷戦”とでもいうべき状況を生み出している。

　エンティティリストに掲載された企業とそのサプライヤー各社は、このような経済摩擦の矢面に立つ可能性がある。米国規制当局は最近、GlobalFoundriesに対し、中国の大手半導体メーカーであるSMICの子会社に部品を供給して貿易規制に違反したとして、罰金を科した。さらに、米財務省は2024年10月28日、中国国内の特定の先進技術分野に対する米国からの投資を制限する規制をまとめ上げた。

　中国は、特に上海のハイテク企業向けの株式市場「科創板（STAR）」にターゲットを定め、国内の資本市場の改革を積極的に進めている。中国証券監督管理委員会（CSRC：China Securities Regulatory Commission）は、合併買収プロセスの統合を目指し、2024年6月の「Eight Measures for Deepening the Reform of the STAR Market to Serve Technological Innovation and the Development of New Productive Forces（技術イノベーションと新たな生産力の開発に対応するための科創板改革の深化に向けた8つの措置）」や、同年9月の「Six Merger and Acquisition Guideline（6つの合併買収ガイドライン）」などの、重要なイニシアチブを発表している。このような改革は、高成長の革新的な産業を育成／支援していくという中国のコミットメントを明示しているといえる。

　中国の目標は、国内で技術チャンピオンを育成し、ハイリスクな競争に挑んで再び戦いの場に戻るようCEO（最高経営責任者）たちを奨励することだ。一方で米国は、AIおよびその関連分野における中国の進展を抑制するための取り組みの一環として、国内の投資家を他の高成長市場に誘導しようとしている。

　こうした状況は、さまざまな投資家にどのような影響を及ぼすのだろうか。米国の投資家が中国の一部のディープテック分野から正式に撤退するに伴い、他の投資家が参入する余地が生まれている。誰がその役割を担うのだろうか。また、どのような予期せぬプレイヤーが、あまり混雑していないこの分野でチャンスを活用できるのだろうか。

投資を厳しく規制する米国

　米財務省の財務次官補（投資安全保障担当）であるPaul Rosen氏は、「米国の投資が、懸念がある国々の軍事や諜報、サイバー能力の開発を支援するために使われてはならない。そのような投資には、金銭的な支援以上のものが含まれており、例えば経営ガイダンスや、優れた人材の採用支援、追加資金源へのアクセスなど、“無形の利益”を提供しているのだ」と強調している。

　米財務省の最新の規制は、米国に拠点を置く企業や市民、永住者が、中国国内で半導体やAI（人工知能）、量子コンピューティング関連の取引に携わることを禁止するという。このイニシアチブは、バイデン米大統領が2024年8月に署名した大統領令に続き、中国の軍事／諜報能力を強化する可能性がある米国資本／専門知識の流出を制限することを目的としている。

　この規制が特にターゲットに定めているのは、中国が軍事やサイバーセキュリティ、監視、諜報などの目的に不可欠な技術の開発を加速させる可能性がある投資だ。例えば、米国の投資銀行は現在、先進半導体技術を専業とする中国企業の株式取得を禁じられている。

　新しい規則では、徹底的な禁止事項の他にも、米国投資家に対し、国家安全保障上のリスクを提示する可能性がある、最新ではない特定の技術を含む取引についても財務省に通知することが義務付けられている。違反者には、最大36万8136米ドルか、または禁止されている取引額の2倍か、いずれか高額な方が罰金として科されることになる。財務省はこのような規制を実施すべく、規制順守を監視する「Office of Global Transactions」を設置するという。