成熟ノードチップ、中国で過剰供給か:利益出ず倒産するメーカーも(1/3 ページ)
中国では現在、レガシーノードの半導体製造プロセスを用いて作られたチップ(成熟ノードチップ)が過剰に供給されているという。TSMCとSamsung Electronicsを除くと、2024年の世界成熟ノードチップの営業利益は前年比で23%減少する見込みだ。中国では、利益を出せずに倒産する半導体メーカーも出ている。
米国EE Timesが今回インタビューを行った3人のアナリストのうち2人が、「2018年頃に最先端プロセス技術をめぐる競争から撤退した半導体ファウンドリーは、現在新たな脅威に直面している。それは、成熟ノードチップをダンピングしている中国のライバル企業だ」と述べている。
米国政府当局は、何カ月にもわたって生産能力の急拡大に対する懸念を示してきたが、2024年12月23日(現地時間)に、バイデン政権が“不正な貿易慣行”と呼ぶ中国の行為に対して調査を行うと発表した。これは、同政権が中国の技術産業の進歩を遅らせるために講じてきた一連の輸出規制/禁止措置に続くものとなる。
米国通商代表部は、第301条調査を開始し、“成熟ノードチップの支配を狙う中国の動きと、その米国経済に対する影響”について調査するという。さらにこの調査では、炭化ケイ素(SiC)基板や、材料として使われる他のウエハーなどの生産に対する中国の影響についても評価する予定だ。
技術調査会社であるTechInsightsのバイスチェアマンを務めるDan Hutcheson氏は、EE Timesの取材に応じ「中国は2018年以降、生産能力を大幅に増強してきたことで、自動車/産業要件に対応したSiCパワーデバイスなどをはじめ、重要な成熟ノードチップを市場に氾濫させるようになった。現在のところ、中国の生産能力は、重要な成熟ノードチップ需要全体の半分以上に優に対応することが可能だ。さらに、ファブの空きスペースや稼働予定の装置などを考慮すると、その上限は100%に近いといえる。一方、世界の重要な成熟ノードチップのファブ稼働率は、80%を大きく下回っている。
半導体業界について取り上げているもう一つの研究グループも、この見解を支持している。
SemiAnalysisのアナリストであるSravan Kundojjal氏はEE Timesの取材に対し「成熟ノードの生産能力は現在、需要を大幅に超過している。成熟ノードファウンドリーの稼働率は、2024年に70%にまで低下した」と述べる。
SemiAnalysisによると、このような稼働率低下にもかかわらず、2024年における中国のロジック/ファウンドリー部門の設備投資額は、前年比で約30%も急増したという。
成熟ノードチップの営業利益、前年比で23%減になる見込み
Kundojjala氏は「成熟ノードチップの収益性は2024年に、過剰生産能力や低い利用率、需要縮小などによって大きな打撃を受けた。SemiAnalysisの予測では、ファウンドリーのトップであるTSMCやSamsung Electronicsを除き、2024年の世界成熟ノードチップの営業利益は前年比で23%減少する見込みだ。成熟ノードの平均販売価格は、平均5%下落している」と述べる。
「現在の成熟ノードの生産能力は、この先2〜3年間の需要に対応することが可能だ。しかし、中国メーカーが積極的な設備投資を計画していることから、この問題が緩和されることはないだろう」(Kundojjala氏)
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