現在の半導体製造は「非効率的」 AI活用でどう変われるか:米でカンファレンス開催(1/3 ページ)
AIが半導体製造も変えようとしている。半導体設計の分野では既にAIがかなり活用されているが、その波が半導体製造にも来ている。米国で開催された「AI Executive Conference」では、IntelとAnalog Devicesが、AIを用いて工場の生産性を向上させた事例を紹介した。
PDF SolutionsのCEOであるJohn Kibarian氏は、米国カリフォルニア州サンフランシスコで2024年12月に開催された「AI Executive Conference」のオープニングセッションに登壇し、「AIは、半導体業界のダイナミクスを変えようとしている。この業界が2025年に6000億米ドル規模に達するまでに60年間かかったが、そのうちの実に26%がAIによるものだと推定される」と述べている。
Kibarian氏は、「われわれは過去60年間にわたってムーアの法則に従い、単位面積当たりのトランジスタ数が2〜3年ごとに2倍になる微細化を行ってきた。imecの最新ロードマップでは、半導体業界は今後10年間でトランジスタ密度を2倍に高めていくと予測されている。AIアプリケーションを実行するために必要な先進デバイスを提供するには、3次元(3D)設計とハイブリッドデバイスが非常に重要になるだろう。そのためには、製造とサプライチェーン全体の大幅な効率向上が必要になる。今回のカンファレンスは、まさにそれが全てだ。つまり、半導体設計/製造/テストにおけるAIアプリケーションの具体的な応用である」と述べている。
1日がかりで行われたカンファレンスでは、数々のプレゼンやデモが行われ、AI技術が既に製造と生産をどのように変化させ、半導体業界の成長や、新しい課題に対応するための変革を支援しているかということが紹介された。
Kibarian氏は、製造分野の経営幹部や意思決定者で満員になった会場で、半導体業界が世界中の政府から与えられた新たなステータスについて説明した。「どの国も自国に工場を保有したいと考え、そのために補助金を提供している。しかし、これは困難な課題である。なぜなら半導体業界は、1つのロケーションに生産能力を集中させ、それに伴って規模を拡大することを得意とするからだ」と述べる。
「今必要なのは、生産能力を集中させることなく効率性向上と生産規模の拡大を実現することだ。工場全体で学習と効率化を加速させるための最善の方法の一つになるのが、AIの活用である」(Kibarian氏)
現在の製造は「非効率的」
1日がかりのイベントから1つのテーマが浮かび上がるとするなら、「製造効率と、AIを活用した世界の工場の効率向上のためのチャンス」ではないだろうか。この日の一部の統計データによると、製造分野では膨大な量の乱雑なデータが生成されているという。工場の装置は、時間全体の90%以上稼働しているが、収益を創出するウエハーの製造に要する時間は、通常50〜60%だという。現在の製造は、非効率的だといえるだろう。
午前の部の講演では、AIを分析に活用しているIntelとAnalog Devices(ADI)が、AIベースの分析環境を工場に導入した道のりについて語った。
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