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「フラッシュメモリで」AI演算 消費電力はGPU比で1000分の1に2025年春にも試作チップが完成へ(1/3 ページ)

フローディア(Floadia)が、SONOS構造のフラッシュメモリを用いて超低消費電力で推論を行うCiM(Computing in Memory)技術を開発中だ。GPUに比べ1000分の1ほどの消費電力で積和演算を実行できるという。2025年春ごろには試作チップができ上がる。

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ルネサスから独立した7人で創業

フローディアのSONOSメモリ 出所:フローディア
フローディアのSONOSメモリ[クリックで拡大] 出所:フローディア

 フラッシュメモリIP(Intellectual Property)を手掛けるフローディアが、SONOS構造のフラッシュメモリを用いて超低消費電力でAI演算を行うCiM(Computing in Memory)技術を開発中だ。

 フローディアは、ルネサス エレクトロニクスでフラッシュメモリの開発を20年以上手掛けていた7人のエンジニアにより、2011年4月に設立された。BCDプロセスを適用したSONOS構造のフラッシュメモリ(SONOSメモリ)技術を、IPとして半導体メーカーやファウンドリーに提供している。

 SONOSメモリは、窒化シリコン(SiN)膜に電子をトラップする(チャージトラップ方式)ことでメモリ機能を実現する。フローティングゲート方式を用いた一般的な組み込みフラッシュメモリでは、ゲート酸化膜が高温に弱く電荷が大量に漏れてしまうのに対し、SONOSメモリは電荷が結晶の微細な構造に閉じ込められていて漏れにくい。そのため優れたリテンションを実現する。現在、最大256Kバイトの中容量用途向け「G1」がフローディア製品の主力で、車載機器やパワーマネジメントIC(PMIC)、スマートフォンなど向けに出荷している。


フローディアの製品ラインアップとアプリケーション。「G1」が量産されている[クリックで拡大] 出所:フローディア
左からフローディア 代表取締役社長の奥山幸祐氏、最高技術責任者(CTO)の谷口泰弘氏、マーケティング部 部長兼CMOの米田秀樹氏
左からフローディア 代表取締役社長の奥山幸祐氏、最高技術責任者(CTO)の谷口泰弘氏、マーケティング部 部長兼CMOの米田秀樹氏

GPUの1000分の1、超低消費電力で推論

 フローディアが、SONOSメモリで培った技術をベースに開発中なのがCiM技術だ。CiMでは、メモリセルに保持された重み係数と、ワード線から印加された電圧で生成された電流がフラッシュメモリを通過することで積算し、その後ビット線上で加算することで積和演算を実行する。GPUのような大規模なデジタル回路ではなく、電流を流すことでアナログ回路的に積和演算を行うのがCiMだ。

 原理的にはシンプルで、GPUに比べると約1000分の1(TOPS/Wで比較)という超低消費電力でニュートラルネットワークの演算を実行できるのが最大の特徴になる。「メモリセルに流す電流がナノアンペアレベルと低いため、極めて低消費電力のAI演算チップを構成できる」(マーケティング部 部長兼CMOの米田秀樹氏)

CiM(Computing in Memory)の原理[クリックで拡大] 出所:フローディア
CiM(Computing in Memory)の原理[クリックで拡大] 出所:フローディア

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