「TSMCのIntelファウンドリー事業買収はない」観測筋が語る:メリットがあるのはIntelだけ(2/3 ページ)
TSMCが米国ドナルド・トランプ政権からの要請を受け、Intel Foundryの運営権獲得を検討しているというニュースが業界をにぎわせている。米国EE Timesが取材した複数の業界アナリストらによると、TSMCが経営難にあえぐ米国のライバルであるIntelの半導体製造事業を買収することはないという。
トランプ政権は、『米国の世界的優位性』のためなら何でもやる
台湾に拠点を置く投資銀行FCC PartnersのプレジデントであるC.Y. Huang氏によると、トランプ政権の包括的な目的は、TSMCからより多くの米国投資を獲得することだという。
同氏はLinkedInの投稿で「トランプ政権はTSMCに対し、現在計画されている2つのアリゾナ工場への650億米ドル規模の投資を、少なくとも2000億米ドルまで増額し、5つの工場に拡大するよう要請してくるだろう。その中には、TSMCにCoWoS(Chip on Wafer on Substrate)先端パッケージング技術を米国に移転するよう要請することなども含まれる。TSMCは台湾では、CoWoSを使用してNVIDIAとごく一部の他の半導体メーカー向けにAIチップを製造している」と述べる。
「トランプ大統領の取引手法は、”脅迫”だけにとどまらない。”保護”と引き換えとした膨大な投資の要求や、過激な移転プロジェクトの提案など、自身が掲げる『米国の世界的優位性』というビジョンを実現するためなら何でもする意欲を見せている。半導体とAIは、米中間の対立の中核テーマであるため、トランプ大統領はあらゆる切り札を出してくるだろう」(Huang氏)
台湾は、米中間の技術戦争で板挟みになっている。台湾は、米国にも中国にも正式な国家として承認されていないが、世界最先端の半導体を提供する不可欠なサプライヤーとしての地位を確立した。
それでも真っ向から拒否はできないTSMC
Hutcheson氏は、「トランプ大統領は第1次政権において、TSMCとの間でアリゾナ州への投資契約を締結した。その取引の中には、Huawei向け半導体チップの製造を停止するという合意も含まれる。そして現在、TSMCは既にアリゾナ州への投資を行っていて、今さら後戻りすることはできない。TSMCは、この提案を検討しなければならない。これは彼らにとって真っ向から拒否することができないものなのだ」(Hutcheson氏)
Triolo氏によると、トランプ政権の今回の動きは、TSMCに交渉の余地を残しているものだという。
「TSMCはおそらく、アリゾナ工場に対する税額控除の延長など、何らかの保証を要求するだろう。また、TSMCは中国の国内需要に対応すべく、中国の工場をより先進的なプロセスノードにアップグレードすることも要求する可能性がある」(同氏)
Hutcheson氏は、TSMCはトランプ政権との交渉材料をほとんど持っていないと指摘する。同氏は「TSMCは米国から撤退し、中国を支援すると”威嚇”することはできるだろう。しかし、中国は同社売上高の10%にも満たず、縮小傾向にある。米国の工場を閉鎖すれば、耐え難いほどのコストがかかるだろう」と語った。
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