トランプ政権、次の標的は中国船とEU製品 サプライチェーン混乱の可能性も:米国造船業界再生を目指すが効果は不透明(1/2 ページ)
米国のドナルド・トランプ政権は、米国に入港する中国製船舶に対して高額な入港手数料を課すことを検討している。EU製品についても高額な関税を課す考えだ。
米国のドナルド・トランプ政権は、中国の海運業界にターゲットを絞り、貿易上の攻撃をエスカレートさせている。米国の港に入港する中国製船舶に対し、高額な入港手数料を課すという案を提示している。
この動きは「アメリカ・ファースト」政策に従うもので、中国海運業界への依存を低減し、休止状態にある米国造船業界を再生することを目的としたものだ。
トランプ政権はさらに、欧州連合(EU)の製品にも25%の関税を課すと脅していて、大西洋を横断する広範な貿易紛争の勃発を懸念する声が高まっている。
中国製船舶に対する課税案
今回の措置提案には、中国製船舶一隻当たり150万米ドルを課すことなどが含まれていて、中国製船舶を使用する海運業者にも影響が及ぶとみられる。これによって、原材料や工業製品などの輸入コストが増加する可能性がある。
この課税では、船隊に占める中国製船舶の割合が考慮され、大手海運業者にとっては1ルート当たり数百万米ドルが加算される可能性がある。
コンテナ船業界向け専門誌のLinerlyticaによると、米国の港に寄港するコンテナ船のうち中国製の割合は約17%だが、太平洋を横断して運行する超大型コンテナ運搬船の中では中国製の割合はさらに高くなるという。
米通商代表部(USTR)は、この提案に関するパブリックコメントを2025年3月24日まで募集している。その後、トランプ大統領が大統領令によってこの課税を実行するとみられる。
「ただ大混乱を巻き起こしたいだけ」と専門家
専門家たちは現在、こうした課税の潜在的影響について推測しているところだ。中には、そのコストが消費者に影響を及ぼすとの見方もある。特に、米国の対外貿易(重量ベース)の約80%が船舶で輸送されていて、米国に籍を置く船舶での輸送は2%未満にとどまるという点を踏まえると、こうした動きは、インフレ対策を取るというトランプ大統領の公約と衝突する可能性がある。
Harvard Business Schoolで国際貿易を専門とするWilly Shih氏は「提案されている多額の手数料は、船荷主が負うコストとなり、さらには消費者に転嫁されるだろう。この非常に攻撃的な動きは、世界が実際にどのように動いているのかを理解せず、無関心で、ただ大混乱を巻き起こしたいという政権の姿を反映している」と述べる。
USTRは「海運やロジスティクス、造船などの分野における中国の優位性は不合理なものだ。このことが外国企業を排斥し、競争を減速させるほか、リスクの増大やサプライチェーンのレジリエンス低下を引き起こす依存を生じさせている」と主張する。
この計画は、米国の造船業を再生するという目標を掲げているにもかかわらず、既に既存の関税による影響で鉄鋼コストが高騰するなどの障壁に直面している。米国の造船業界は、まだ中国の地位を引き継ぐ準備ができていない可能性がある。新世代の大型コンテナ船やタンカー、ばら積み貨物船などを製造するための準備が整っていないのだ。
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