25%の半導体関税が課されたら…… 米国民の負担が増えるだけ:大山聡の業界スコープ(86)(1/3 ページ)
米国のトランプ大統領は2025年2月、半導体に税率25%前後の輸入関税を賦課する可能性があると明かした。実際に半導体にこのような関税がかけられるとどうなるか、予測してみた。
米国のトランプ大統領は2025年2月18日(米国時間)の記者会見で、半導体に税率25%前後の輸入関税を賦課する可能性があり、さらに今後1年のうちに大幅に引き上げられる可能性がある、と話した。筆者としては、税率引き上げの可能性は非常に低いと予測しているが、トランプ政権の動きは従来の常識では予測しにくい部分が多く、正直なところどうなるかは分からない。そこで、実際に半導体にこのような関税がかけられるとどうなるか、について予測してみた。
大きく増加した米国向け半導体
下図は、世界半導体市場の地域別出荷の実績である。2024年は前年から19.1%増の6276億米ドルで、近年では珍しく米州向けの出荷が31%と世界最大の実績になった。米州向けの出荷は、前年比44.8%増と非常に大きく増加したのである。
2024年の半導体市場は、データセンター向けの需要が極めて好調で、PC、スマホなどの電子機器向け需要はあまり活性化しなかった。世界のPCの9割、スマホの7割を生産している中国が、従来は世界最大の半導体消費国になるのだが、GAFAMなど大手ITベンダーのデータセンターが集中する米州向けの出荷が中国向けを上回った、というのが2024年半導体市場の特徴といえるだろう。
米国における半導体生産
では、米州における半導体生産はどうなのか。この点については正確な統計値が存在しないが、大手半導体メーカー各社の製造拠点および、半導体製造装置の出荷状況から類推すると、米州での半導体生産は世界の10〜15%の範囲と推定される。米国も自国内での生産比率を引き上げるための政策を打ち出している。だが、日本や欧州と同様、自国企業だけでこの数字を引き上げることは極めて困難である。
米国籍の半導体メーカーとしては、Intel、Micron Technology(以下、Micron)、Texas Instruments(以下、TI)といったIDMが米国内に大規模な半導体工場を持っている。このうちIntelは経営不振の末、製造部門を新会社として連結から切り離すことを決断した。新会社はIntel以外の新たな資本を注入することが計画されており、TSMCからの資本注入も選択肢の中にはあるようだ。TIは昨今のアナログ不況で業績が伸び悩んでおり、大掛かりな設備投資は計画していない。Micronはメモリ市況が好調で、積極的に設備投資する計画だが、メモリ業界においてはSamsung Electronics、SK hynixの後じんを拝しており、シェアの拡大は容易ではない。
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