Intel新CEOにCadence出身のLip-Bu Tan氏 分割案にはブレーキか:設計も製造も知る大ベテラン(2/2 ページ)
Intelは、Cadence Design Systemsの元CEOであるLip-Bu Tan氏を新しいCEOに任命した。
AIハードウェアの知見も
とはいえ、Intelからの最近のニュースは、18Aプロセスが順調に進んでいることを示唆していて、Gelsinger氏の下で開始されたPDK(Process Design Kit)の開発が進行中だ。PDKは、プロセスと顧客のEDAツール間の実質的なインタフェースであるため、その重要性はTan氏も理解していることだろう。
設計面では、Intelが直面している最大の問題の1つは、データセンターAIアクセラレーター戦略だ。これまで何度も勢いを得ることに失敗している。Tan氏は、1987年に自身が設立したベンチャーキャピタルのWalden Internationalでの仕事を通じて、この分野でも経験を積んでいる。同氏はエンタープライズAI企業であるSambaNovaの創業時の会長で、後にエグゼクティブチェアマンとして経営的な役割を担った。データセンターにおけるAIハードウェアの現実を知っていることは、Intelの将来について決定を下す上で有利に働くはずだ。
Tan氏は「次善の策」
いくつかの疑問は残る。Tan氏は2022年9月からIntelの取締役を務めていたが、2024年8月に辞任した。これは、Intelの官僚的な文化、従業員の多さ、そして顧客中心主義が不十分であると感じた委託製造へのアプローチに不満を抱いたためだと報じられている。これらの点でTan氏はGelsinger氏と意見が合わなかったのか、それとも取締役会と意見が合わなかったのかは不明だ。いずれにしても、Tanは今後Intelの構造と従業員に大きな変化をもたらすことが予想される。
Intelの取締役会はGelsinger氏の退任をきっかけに、半導体業界での実務経験がないメンバーが多いと批判を浴びてきた。その後、半導体業界のベテランである元ASML CEOのEric Meurice氏と元Microchip CEOのSteve Sanghi氏が加わった。Tan氏もCEOとしてIntelに復帰する。これで、取締役会への批判もいくらか落ち着くだろう。
以前、筆者はGelsinger氏はかけがえのない存在だと述べたが、Tan氏の任命は次善の策といえそうだ。取締役会が、Intelの顧客とウォール街の双方を満足させるような、業界経験とリーダーシップの両面で文句のつけようのない人物を選んだことは心強い。インテルほどの規模の企業を立て直すには何年もかかるだろうから、一瞬も無駄にできない。
【翻訳/編集:EE Times Japan】
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