SiC搭載の新型IPMを開発、エアコンの電力消費を大幅削減:SiチップとSiCチップを並列接続
三菱電機は、エアコンなどの電力消費を大幅に削減できる「インテリジェントパワーモジュール(IPM)」を新たに開発し、サンプル出荷を始めると発表した。
エアコンの動作状態に応じて、2つのチップ特性を引き出す
三菱電機は2025年4月、エアコンなどの電力消費を大幅に削減できる「インテリジェントパワーモジュール(IPM)」を新たに開発し、サンプル出荷を始めると発表した。
エアコン室外機内部に搭載されるコンプレッサー駆動用インバーター基板はこれまで、シリコン(Si)パワー半導体チップを実装したパワーモジュールを用いるのが一般的である。ところが、Siパワー半導体チップだと、材料の特性もあって性能改善には限界があり、消費電力を大きく削減するのは極めて難しかったという。そこで注目されているのが高効率の炭化ケイ素(SiC)パワー半導体チップである。ただ効率は改善できるものの、単純に置き換えるとコスト高になるという課題もあった。
そこで今回は、Siパワー半導体チップとSiCパワー半導体チップを並列接続し、エアコンの動作状態に応じて、両方のチップがそれぞれの特性を出せるような技術を開発した。具体的には、並列接続素子に適した駆動回路ICとパワー半導体チップを1つのモジュールに集積する実装技術を開発した。
試作したIPMの動作特性からエアコンの電力消費を試算した。この結果、Siパワー半導体チップだけのIMPを用いたコンプレッサー駆動用インバーター回路部と比べ、年間消費電力量を41%も削減できることが分かった。しかも、外形寸法が従来のIPMと同一のため、既存の基板を用いて新型IPMとの置き換えが可能となっている。
なお開発した技術は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」における、共同研究の成果である。
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