ミニマルファブの時代がやってくる!:半導体工場を3000万ドルで構築(1/3 ページ)
米国と英国の企業が、相次いでミニマルファブ(省スペースに構築できる半導体工場)の販売を開始した。3000万米ドル規模で工場を構築できるので、アフリカやグローバルサウスといった、これまで半導体工場を建てられなかった地域にも、工場ができる可能性が出てくるという。
半導体工場を3000万ドルで構築
2つの企業が、小さなスペースに構築できる半導体製造工場(ミニファブ)の販売を開始した。一般的な半導体ファブの建設コストが数十億米ドル以上であるのに対し、ミニファブは半導体製造施設全体をわずか3000万米ドルで構築できるという。
ミニファブは、小売ラベリングや家電製品向けの旧世代のパワー半導体やフレキシブルチップの製造に向ける。英国を拠点とするPragmatic Semiconductor(以下、Pragmatic)のCEOを務めるDavid Moore氏は米国EE Timesのインタビューで「同施設は、かつては半導体製造には現実的ではないと考えられていた場所にも建設できる」と語った。
Pragmaticの「Fabs-in-a-Box」は、一般的な半導体ファブの価格帯(200億米ドル)と比べて桁違いに低コストで、生産を開始までの時間も約3分の1に抑えられるという。
Moore氏は「一般的な工期が3〜5年であるのに対し、わずか12〜14カ月で新しいラインを構築することができる。工程数を減らし、費用対効果の高い材料を使用しているため、製品全体のコストをより最適化することができる」と述べている。
酸化ガリウムパワー半導体をミニファブで製造
大西洋を隔てた米国では、Nanotronicsが同社の「Cubefabs」で、最先端のパワー半導体の性能を超えるデバイスが製造できることを実証した。
NanotronicsのCEOを務めるMatthew Putman氏はEE Timesに対し「熱特性を維持しながら、より高い定格電圧を達成した。現在これらのチップを製造しており、半導体企業と協力して生産を拡大している」と語った。
NanotronicsのCubefabは、世界の85%の環境(地震の危険性が高い地域を除く)で動作できるように設計されたモジュール式のプレハブ工場である。このミニファブでは、パワー半導体の製造に一般的に使用されるような生産ツールを使用しているが、AI技術を活用することで、超ワイドバンドギャップ材料である酸化ガリウムで優れた成果を出しているという。
Putman氏によると、その鍵となるのがNanotronicsの生成AIの活用だという。
「生成AIを活用することで、酸化ガリウムを用いたチップの製造が可能になる。これは当社の最初の製品であるが、他の製品も製造可能だ。科学的に証明されているが、まだ大規模生産が可能ではないものを、AIを活用することで歩留まりを向上させ、コスト競争力を高めながら、既存の製品よりも数倍優れたものにすることを目指している」とPutman氏は述べている。
Putman氏によると、Cubefabには、ASMLの装置や、一般的な半導体メーカーが使用しているような高価なツールは必要ないという。「当社は機器サプライヤーとの強力なパートナーシップを築いており、独自のアルゴリズムと機器によって信頼を得ている」(同氏)
Nanotronicsはニューヨークにパイロットラインを建設中で、2025年後半にオープンする予定だという。
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