半導体市場の「勝ち組」と「負け組」:大山聡の業界スコープ(88)(1/3 ページ)
大手半導体メーカー各社の2025年1〜3月期の決算が出そろった。各社の業績を比較してみると好不調が明確に分かれている。
世界半導体市場統計(WSTS)によれば、2025年1〜3月の世界半導体市場規模は、前年同期比18.8%増と好調に推移している。製品別にみると、メモリが同24.7%増、ロジックが同36.9%増という好調ぶりである。
この状況下で大手半導体メーカー各社の業績はどのように推移しているのか。2025年1〜3月期の決算が出そろったところで、各社の業績を比較してみると好不調が明確に分かれている。好不調がはっきりしているという傾向は2024年から継続していて、大手の中にも「勝ち組」と「負け組」が混在しているといえよう。
比較対象に選んだのは、調査会社Omdiaが発表した2024年半導体売上高ランキング上位10社(NVIDIA、Samsung Electronics、Intel、SK hynix、Qualcomm、Broadcom、Micron Technology、AMD、Apple、Mediatek)のうち、半導体メーカーではないAppleを除外し、代わりに半導体受託製造(ファウンドリー)専業のTSMCを含めた10社を対象にした。
「勝ち組」と「負け組」をすでにイメージできる方は多いと思うが、ここでは具体的な数値の比較をご覧いただきたい。
TSMC
TSMCの2025年1〜3月期売上高は、前年同期比41.6%増。TSMCの売り上げは基本的にロジックで占められ、その伸び率はWSTSが集計したロジックの市場成長率を大きく上回っている。紛れもなく「勝ち組」の1社といえよう。
グラフからも分かるように、7nm、5nm、3nmといった最先端プロセスの売り上げが伸び、この分野で市場をほぼ独占していることが同社の強みである。
同社の業績予想によれば、2025年4〜6月期は前年同期比38%増程度の伸びが見込まれる。
NVIDIA
NVIDIAの最新決算は、2024年11月〜2025年1月の3カ月で、他社とは決算期がズレているが、前年同期比77.9%増という驚異的な伸びを記録している。まさに「勝ち組」の代表格であり、製造委託先であるTSMCの伸びを支えている企業でもある。
グラフからも分かるように、同社の伸びを支えているのはデータセンター向けの需要で、この市場におけるGPUはNVIDIAがほぼ独占している状態である。ちなみに2025年2〜4月期の業績予想は、前年同期比65%増程度の伸びを見込んでいる。この勢いは当面続きそうだ。
Samsung
Samsungは半導体だけでなく、さまざま々な電子機器も手掛ける総合電機メーカーであり、ここでは同社のデバイスソリューション(DS)部門だけに注目してみよう。
DS部門の2025年1〜3月期は、メモリが前年同期比9.2%増、その他デバイスが同6.2%増。メモリの市場成長率(WSTS集計値)を大きく下回っている。HBMで出遅れていることが大きな要因だろう。その他デバイスにはディスプレイなど半導体以外の製品も含まれているが、ロジックの比率が高いことを考えると、こちらも物足りない成長率である。TSMCとは対照的に、ファウンドリー事業で苦戦していることが主要因だろう。残念ながらSamsungは「負け組」に属することになる。
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