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半導体市場25年は予想以上に伸びるが26年はメモリが失速? ―― WSTS春季予測考察大山聡の業界スコープ(89)(1/3 ページ)

世界半導体市場統計(WSTS)は2025年6月3日、2025年および2026年の半導体市場予測を発表した。この予測を見ながら今後の半導体市場見通しについて考える。

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 世界半導体市場統計(WSTS)は2025年6月3日、2025年および2026年の半導体市場予測を発表した。前回の2024年11月発表では、2025年の市場成長率を前年比11.2%増と予測していた。今回の発表は前回予想を変更せずに据え置いた。2025年4月までの半導体市況を見る限り、これまでの出荷実績は同19.3%増で推移しており、据え置きはやや保守的な見方といえるだろう。翌2026年については同8.5%増と予測しているが、筆者としてはマイナス成長もあり得るのではないか、とみている。これまでの状況を踏まえながら、今後の見通しについて考えてみたいと思う。

EV減速が響くディスクリート、回復は見込めるか

 ディスクリートは2025年を前年比2.6%減と予測している。前回の予測では同5.8%増で、ここからは下方修正されている。2025年1〜4月までの実績を見ると同6.9%減であり、ここからは回復する予測となっている。4月まで前年同月比でマイナス成長が続いているが、そのマイナス幅は縮小傾向にあるので、この予測に違和感はない。この分野で過半を占めるパワートランジスタ市場の不況が想定より長引いていることが最大の懸念事項である。特に電気自動車(EV)需要の下振れが打撃になっている。ただし中長期的にはクルマの電動化は今後も進むと筆者はみており、電動化のキーデバイスであるパワートランジスタ需要も堅調に伸びるだろう。2026年は同8.5%増という予測だが、十分に達成可能な数字と思う。


半導体製品別市場規模実績および、予測[クリックで拡大] 出所:WSTS/2025年春季半導体市場予測

 光半導体は同4.4%減と予測している。前回予測では同3.8%増で、ここからは下方修正されている。2025年1月から4月までの実績を見ると同1.1%減であり、ここから悪化する予測になっている。この市場は2025年3月まで6カ月連続でマイナス成長が続き、4月に突然2桁のプラス成長に転じた。今後の予測が難しい状況ではある。ちなみにこの市場は約半分がイメージセンサーで占められており、こちらは4月までの実績が1桁の前半ながらプラス成長で推移している。スマホ向けの需要が堅調に推移している現状の傾向から考えると、2025年はマイナス成長を免れるのではないだろうか。2026年の予測は同1.7%増になっているが、特に違和感はない。スマホ1台当たりのイメージセンサー搭載数量がどう変化するかによって見通しが大きく変わるので、その動向を見守る必要がある。

 センサーは同4.5%増という予測。前回予測では同7.0%増で下方修正されている。2025年1〜4月までの実績を見ると同16.1%増であり、ここからは悪化する予測になっている。この市場は2023年、2024年とマイナス成長が続いたが、これは主に車載用途の過剰発注が過剰在庫を引き起こしたことが原因である。2025年初頭から続く同2桁成長は、過剰在庫が解消されたことを示している、とみるべきだろう。そうであれば、2025年は10%以上の成長が期待できる。中長期的には、クルマの高機能化/多機能化が進む中、車載センサーの需要は堅調に伸びると期待できる。2026年は同4.2%増という予測だが、筆者としてはやはり10%程度の成長が十分期待できるとみている。

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