SiCパワーデバイス市場は年率20%で成長、30年に103億ドル規模に:足元でEV低調も「電動化がけん引」とYole(1/2 ページ)
フランスの市場調査会社Yole Groupによると、SiCパワーデバイス市場は2024年から2030年まで年平均成長率(CAGR)20%で成長し、2030年には103米ドル規模に拡大する見込だという。
フランスの市場調査会社Yole Group(以下、Yole)は2025年6月24日(フランス時間)、炭化ケイ素(SiC)パワーデバイス市場の最新予測を発表した。それによると、同市場は2024年から2030年まで年平均成長率(CAGR)20%で成長し、2030年には103米ドル規模に拡大する見込だという。
5年後も市場の70%は自動車/モビリティ分野
同市場は足元では電気自動車(EV)市場の減速が、SiC半導体メーカーの業績や計画に大きな影響を与えている。Yoleもこの点について「2024年のEV販売の減速によってデバイスとウエハー両方の需要が遅れている。今後1〜2年は市場プレイヤーの収益見通しに影響を及ぼすだろう」と言及。各社は在庫や生産能力拡張を含む資本的支出(CAPEX)と事業運営費(OPEX)戦略を見直すことになる、としている。
一方でYoleは、プラスな側面として高電圧の自動車プラットフォーム勢いが継続していると指摘。今後拡大が期待される800VシステムのEVは、従来の400V EVよりSiCの採用率が高く、市場の成長を後押しするものになるとしている。Yoleによれば、自動車/モビリティ分野の需要は今後もSiCパワーデバイス市場のけん引役であり、具体的には2030年も市場全体の71%の水準を維持するという。
その他の分野でもEV充電器や太陽光発電、電源など複数の産業用アプリケーションでSiCの浸透が進んでいると説明。産業分野は2030年に市場全体の28%を占める見込みだ。また、高電力データセンター分野での成長も大きく、今後5年間で2億米ドルの機会が見込まるという。
8インチウエハーへの移行は順調に進展
Yoleによると、8インチSiCプラットフォームへの移行は2024年に順調な進展を見せたという。同社はWolfspeedが2024年下期に6インチよりも8インチでより多くの収益を上げ始めたことや、中国SICCが大量の8インチウエハーを市場に展開し、ウエハーの制約が緩和されたことなどを挙げている。なお2025年第2四半期(4〜6月)現在、主要デバイスメーカーの多くが8インチプラットフォームの認証を進めている一方、実際の生産能力増強は需要回復のタイミングに合わせて計画される見込みだとしている。
Yoleによると2025年現在、要件の厳しい車載用途の需要に対応できることから設計/デバイス製造/パッケージングを統合したIDMビジネスモデルが主流だという。Yoleは「2022年まではSiCウエハーの供給元が限られていたことから、複数の大手デバイスメーカーもここ数年でSiCウエハー製造能力を統合した」と説明。現在は市場に十分なウエハー供給があり、ウエハー製造によって得られる価値は減少しているがYoleは「SiCウエハー能力は今後数年間、自社研究開発を加速し、地政学的リスクを軽減するための戦略的アプローチと考えられている」としている。
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