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Broadcomのスペイン投資中止が示す「国家的支援の限界」欧州全域で半導体強化に乗り出すも(1/4 ページ)

Broadcomは、スペインで10億米ドル規模のATP(組み立て・テスト・パッケージング)施設の建設を計画していたが、同計画を中止した。この破綻は、欧州における南北の分断と、財政的インセンティブの限界を示唆する。

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 Broadcomは、スペインで10億米ドル規模のATP(組み立て・テスト・パッケージング)施設の建設を計画していたが、交渉の決裂により、2025年7月に同計画を中止した。これにより、好機を狙った同プロジェクトが同社のグローバル戦略の中心ではなかったことが明らかになった。

 欧州は、世界半導体市場における重要なプレイヤーとしての地位を確立し、外部依存の低減と、地域的な生産能力の強化に努めている。しかし、批判的に分析すると、こうした野心が欧州大陸全体、特に北部と南部地域の間の投資実態にどのように反映されているかについては、大きな乖離があることが明らかになっている。

欧州の「過度に野心的な」目標

 世界半導体業界は2020年代初頭、純粋な経済分野から激しい地政学的競争の舞台へと劇的な変化を遂げた。

 世界各国の政府は、パンデミックによって露呈したサプライチェーンの脆弱性に対応して、半導体生産の国内回帰と多様化を目指した大規模な補助金プログラムを立ち上げた。

 欧州連合(EU)の野心的な「EU Chips Act(欧州半導体法)」は、2030年までに世界半導体市場における欧州のシェアを20%に倍増させることを目指しており、この産業政策を最前線で推進するものである。

EU Chips Actの概要 出所:EU Commission
EU Chips Actの概要 出所:EU Commission

 欧州半導体法は、公的資金と民間資金を合わせて430億ユーロ以上を見込んでおり、一部の当局者は1150億ユーロに達する可能性もあると述べている。しかし、欧州会計検査院(ECA)は、重大な資金の不整合があると指摘している。

 欧州委員会が直接管理しているのは、発表された資金総額の約5%、つまり約45億ユーロにすぎず、大部分は国家予算と民間企業から調達される見込みだという。

 この分散型財務モデルは、欧州委員会には各国の投資を調整する直接的な権限がなく、「EU戦略」は異なる国家プロジェクトの集合体になっていることを意味している。ECAは、市場シェア20%獲得というEUの目標を「非常に実現性が低く」「過度に野心的」と明言しており、欧州委員会の予測では、2030年までにわずか11.7%の緩やかな増加にとどまるとされている。

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