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トランプ関税は「深刻な自滅行為」、最も得をするのは中国国民負担増、同盟国との関係にも亀裂(2/4 ページ)

トランプ政権による関税政策は、米国内の産業強化には逆効果であることが明らかになってきた。米国企業や米国民の負担を増加させ、同盟国を遠ざけている。そして中国の勢いを削るどころか、むしろ中国のテクノナショナリズム的野望を強める手助けをしている。

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関税によるコスト増は6割が米国負担 AIインフラ構築にも影響

 この関税制度は、米国の経済を強化するには程遠く、自らに深い傷を負わせている。Goldman Sachsのアナリストは「外国がコストを負うというレトリックにもかかわらず、このような輸入関税によって生じる毎月数十億米ドル規模の負担のうち、米国メーカーが64%を肩代わりしているという状況だ」と明かした。

関税政策によるコスト増の大部分は米国に転嫁されている
関税政策によるコスト増の大部分は米国に転嫁されている[クリックで拡大] 出所:Goldman Sachs

 このようなコストは、必然的に消費者価格を押し上げることになる。エコノミストや業界アナリストは「関税は、膨大な製品の消費者価格を直接上昇させることになる」との見方で広く一致している。

 米国世帯に対する平均直接コストは約2400米ドルになると推定されている。特に打撃を受けるのは、低所得家庭だ。米国の市場調査会社Bernstein Researchのアナリストは「関税と米国内での製造によるコスト上昇は、最終的に米国の消費者とサプライチェーンの各階層とで負担することになるだろう」と指摘する。

 この制度は特に、米国のイノベーションの源であるスタートアップや中小企業に悪影響を与える。ハードウェア企業は直ちにコスト上昇に直面するほか、半導体のコスト増がデータセンター建設コストに影響することから、ソフトウェア企業も、クラウドコンピューティングコストの上昇によって打撃を受ける。

 情報技術イノベーション財団の試算によれば、半導体に25%の関税が課されることで、データセンターの建設コストが15%も上昇し、さらに関税が100%になればコストが倍増する可能性があるという。このような自ら招いた設備投資費の増加により、重要なAIインフラの構築が直接的に脅かされ、米国メーカーは世界のライバル企業に対して競争面で非常に不利な立場に置かれることになる。

 ITIFのグローバルイノベーションポリシー担当バイスプレジデントであるStephen Ezell氏は、米国EE Timesの取材に対して「半導体関税は、自動車や家電、医療機器に至るまで、米国のさまざまな消費者向け製品のコストを上昇させるだろう」と述べている。

 直接的なコスト増に加え、政策のずさんさや予測不可能性は、業界を衰退させる不確実性を生み出す。10年単位のサイクルで投資などを行う半導体業界にとって、「政治の気まぐれ」「突然の方向転換」「場当たり的な要求」に左右される環境は停滞や失敗の原因だ。

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