米国の中国向け装置輸出「特例撤回」 SamsungとSKへの影響は:Micronや中国メーカーに恩恵が(1/3 ページ)
米国のトランプ政権が、IntelとSamsung Electronics(以下、Samsung)、SK hynixに対する、中国工場向けの最先端半導体製造装置の輸出に関する「認証エンドユーザー(VEU)」認定を取り消すと発表した。大きな影響を受けるのは、SamsungとSK hynixだ。本稿では、両社が中国に保有する半導体製造施設の概略や、今回の決定がいかに深刻な影響を引き起こすのかという点を中心に考察する。
米国のトランプ政権は、IntelとSamsung Electronics(以下、Samsung)、SK hynixに対する、中国工場向けの最先端半導体製造装置の輸出に関する「認証エンドユーザー(VEU)」認定を取り消すと発表した。
中国との交渉決裂に備えた予防策? 翻弄される業界
このVEU認定は、2022年10月にバイデン前政権によって最先端製造装置に課された輸出規制に対し、導入されたものだ。
VEUプログラムは2023年に拡大され、選定された半導体メーカーが米国技術をライセンスなしで中国に輸出できるようになった。これにより、Applied Materialsのような米国メーカーは、供給先が中国の軍事/情報部門ではない場合に限り、自社製品を中国の顧客向けに出荷する際の手続きを簡素化できることになった。
VEU認定の終了が120日後に実行されるということは、IntelとSamsung、SK hynixが中国国内の自社製造施設向けに米国製の半導体製造装置を調達する際、ライセンスが必要になるということだ。そのためには個別の審査を受けることになり、ライセンスの取得に3〜6カ月間かかる可能性がある。
今回の措置については「米国政府が、中国との貿易交渉が決裂した場合に備えた下準備をしている」という見方が一般的だ。つまり、米中間の現在の一時的な停戦状態が崩れるという最悪のシナリオを想定した、予防策ということだ。
それにもかかわらず、米国がVEU認定を取り消したことで、中国で工場を稼働させている半導体メーカーにとっては、規制を巡る不確実性が高まっている。またこれは、中国国内の工場による、成熟したレガシーチップに対応するプロセスノードへの移行を後押しする可能性がある。
NAND工場も売却のIntelには「ほとんど影響ない」
まず始めに指摘すべき点は「Intelは、今回のVEU認定の取り消しによる影響をほとんど受けない」ということだ。Intelは通知リストに掲載されているが、2020年に中国・大連のNANDフラッシュ工場をSK hynixに売却済みであるため、今回の米国規制による影響は最小限にとどまる。
Intelは現在、中国・成都に組み立て/テスト工場を保有しているが、必ずしも最先端の半導体製造装置が必要なわけではない。Micron Technologyも西安に組み立て/テスト工場を保有しているが、こちらも同様だ。
一方でTSMCは、こうした動きに不安を抱いているようだ。南京にある同社の12インチ工場は、無期限のVEU認定を受けている。「Fab 16」は12nm/16nm/28nmチップを生産していて、現在のところ同社にとって最も収益性が高い海外工場となっている。※上海にある「Fab 10」は、1.3μmや1.8μmのような成熟プロセスノードを適用しているため、VEUライセンスの取り消しによる影響はない。
※)2025年9月2日、米国がTSMCのFab16へのVEU認定も撤回する見通しだと報じられた(EE Times Japan編集部追記)
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