中国半導体装置展示会「CSEAC」レポート 中工程シフトと“露光回避”の実態:大山聡の業界スコープ(92)(1/2 ページ)
6年ぶりに中国を訪れ、半導体装置展示会「CSEAC」を視察してきた。今回はその模様をレポートする。
2025年9月4〜6日の3日間、中国・無錫で開催された半導体製造装置の展示会「CSEAC」に参加してきた。正確に言えば、CESEACと同時開催の講演会での講演を依頼され、開催初日午前に20分間、講演するために訪れた。筆者にとって6年ぶり、コロナ禍以降初めての中国出張であり、その間の変貌ぶりや半導体産業への熱気など、いろいろなことを感じた貴重な体験になった。今回は、その視察で感じたことを述べたいと思う。
SEMICON Chinaとの対比で見えるCSEACの位置付け
CSEACは半導体製造装置、そのための部品や材料などを中心とした展示会で、ことしで13回目を迎える。中国における半導体製造装置の展示会としては「SEMICON China」が有名であり、こちらは2025年3月に上海で開催された。CSEACはその半年後に無錫で開催されたわけだ。SEMICON Chinaはすでに世界半導体市場で実績のある装置メーカーや材料メーカーを中心とした展示会であるのに対し、CSEACは中国ローカルの装置や部品・材料メーカーを中心とした展示会。これから実績を上げよう、名前を覚えてもらおう、という中国企業の展示が多くみられた。今回、展示会事務局と筆者の仲介役を担ってくれた産業タイムズ社上海支局長の黒政典善氏によれば、SEMICON Chinaは出展枠を確保するための競争率が激しく、たとえ実績のある企業でも1回展示を見送ってしまうと、次回の出展枠の確保が困難になることもあるという。まだ実績の乏しいローカル中国企業にとって、SEMICON Chinaへの展示は「狭き門」という位置付けだろう。そんな彼らにとってCSEACは貴重な機会を提供してくれる展示会、という位置付けである。ちなみに毎年12月に東京ビッグサイトで開催される「セミコン・ジャパン」は、出展枠競争は緩いらしい。最近は日本政府が半導体産業にテコ入れしている効果もあって、来場者数は増えているようだが、出展枠の獲得にしのぎを削る中国での展示会とは「熱気に差がある」と筆者には感じられた。
CSEACでの展示会場は、出展各社の「成長著しい中国市場で機会をつかみたい」という姿勢を反映しているせいか、来場者は多くの中国人で占められていた。欧米人の来場者はあまり見かけなかったし、欧米企業の出展も少なかった。しかし、あちらこちらから日本語の会話が聞こえてきた。欧米人に比べれば、日本人はこの展示会に興味を持つ人が多かったのではないだろうか。実際に日系企業の展示は欧米企業よりも多く、彼らは需要拡大が見込める中国市場への進出を積極的に考えているのだろう。もともと日本には半導体装置向けの部品メーカーや材料メーカーが多いので、ある意味必然的な傾向と言えそうだ。
中国装置メーカーの勢力図――NAURAを筆頭に台頭する各社
中国の半導体製造装置メーカーとして著名なのは「NAURA」(北方華創科技集団)である。売上規模は年間5000億円から6000億円、世界の半導体装置メーカーランキングでもトップ10の1社に数えられる存在だ。同社は成膜、エッチング、熱処理、洗浄など各種装置を取りそろえている。なお、同社のブースにはKingsemi(芯源微電子)の展示も含まれていた。Kingsemiはコータ・デベロッパを手掛ける装置メーカーで、独立した上場企業である。しかし最近、NAURAがKingsemiの株式を段階的に取得しており、NAURAグループ傘下に入れようとしている。その意図を隠そうともせず、あたかもすでに傘下に収めたように展示するあたりが中国流なのだろうか。Kingsemiは単独のブースでも出展しており、独立企業であることを主張していたが、同社の売上規模は350億〜400億円。NAURAよりも規模はかなり小さい。この先、両社の関係がどのように進展するかが見ものである。
中国の半導体製造装置メーカーとして2番手につけているのはAMEC(中微半導体設備)である。売上規模は年間1900億〜2000億円、1位のNAURAとはやや規模が離れているが、成膜、エッチングを中心とした装置を手掛けている。特にGaN向けMOCVD装置にも注力していることを、展示会では強調していた。
中国3番手はACM Research(盛美半導体設備)だ。売上規模は年間約1200億円で、洗浄装置を主力製品としている。ただし今回の展示では、リソグラフィ周辺装置の製品領域拡張を明確に打ち出していた。具体的にはKrFリソグラフィ工程に対応した周辺装置「Ultra Lith KrFトラックシステム」を展示しており、将来を見据えてArFプラットフォームをベースに開発しているという。
中国4番手はPiotech(拓荊科技)である。売上規模は年間800億〜900億円、成膜装置を主力としている。ただし今回の展示では、HBMの中工程向けを意識したChip to Waferのハイブリッドボンディング装置を紹介し、同社が今後中工程関連に注力する姿勢を見せていた。
中国5番手はHwasting Technology(華興科技)である。売上規模は年間約700億円、CMP装置を主力としている。ただし今回のCSEACでは展示がなかった。
中国6番手はKingsemi(芯源微電子)である。すでに述べたように、この会社はコータ・デベロッパを手掛ける企業で、NAURAが自社のグループ傘下に収めようとする動きがみられる。
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