エッジAI同士が協調 フィジカルAIで目指す「全体最適の製造DX」:エイシング CEO 出澤純一氏(1/4 ページ)
製造業では、製造プロセスのデジタルトランスフォーメーション(DX)のためのデータ活用やAI導入が進んでいる。AIアルゴリズム開発やAI導入支援を行うエイシングのCEO 出澤純一氏に、製造業のデータ活用/AI導入の現状や課題、AI同士が協調して工場全体の最適化を目指す「スマートインダストリー構想」について聞いた。
製造業では、製造プロセスのデジタルトランスフォーメーション(DX)のためのデータ活用やAI導入が進んでいる。
AIアルゴリズム開発やAI導入支援を行うエイシングのCEO 出澤純一氏に、製造業のデータ活用/AI導入の現状や課題、AI同士が協調して工場全体の最適化を目指す「スマートインダストリー構想」について話を聞いた。
機械工学と情報工学の2つのバックグラウンドが強み
――エイシング設立の経緯と事業内容を教えてください。
出澤純一氏(以下、出澤氏) エイシングは、2016年に私と岩手大学 理工学部 准教授(当時)の金天海氏で設立したAIスタートアップだ。早稲田大学の同じ研究室で制御系AIの研究を行っていたことが創業のきっかけになった。
事業内容は、主にAIアルゴリズムのライセンス提供とAI導入支援だ。顧客は8割方が製造業で、製造プロセスのDXの相談が多いが、東京ガスの大型ビル空調制御やJR東日本の上越新幹線における散水消雪器の最適稼働など、インフラ最適化も手掛けている。エッジ対応が強みだが、AWS(Amazon Web Services)などのクラウド環境でのシステム構築も可能だ。
産業機器や建設機械などの最終製品へのエッジAI導入も行っている。最終製品はコスト制約が大きく、「今使っているマイコンにAIも取り入れたい」といったニーズがある。一方で製造プロセスのDXは、レイテンシを最小限にすることが重視されるので、PLC(Programmable Logic Controller)やIPC(Industrial PC)を用いる場合が多い。
私は機械工学科出身で、熱力学や流体力学、制御工学といった機械工学全般を学んでいたが、研究室はロボットを専門としていたので情報工学についても学ぶことになった。そのため機械工学と情報工学の両方のバックグラウンドがあり、それがエイシングの事業にもつながっている。
オンデバイス学習に対応したエッジAIアルゴリズムを提供
――エイシングが提供するAIアルゴリズムや導入支援サービスはどのようなものですか。
出澤氏 AIアルゴリズムライブラリ製品群「AiiR(AI in Real Time)」はリアルタイム性の高さとオンデバイス学習対応が特徴だ。「AiirDNN」は汎用マイコンに搭載できるディープラーニングアルゴリズムで、「TensorFlow Lite for Microcontrollers」と互換性がありながら、より軽量で計算コストを抑えられる。他にも、数十キロバイトのメモリで動作する軽量性が特徴の「AiirMST」や、軽量かつ異常検知に特化した「AiirMSAT」などをそろえている。
出澤氏 ただしこれらは畳み込みニューラルネットワーク(CNN)やリカレントニューラルネットワーク(RNN)といったレベルでアルゴリズムそのものを提供するもので、AIリテラシーの高い企業でないと使いこなすのは難しかった。そのため、今はこれらに加えて溶接の良否判定ソリューションや半導体製造装置の位置決めレーザーの寿命予測ソリューションなど、個別の用途で使えるものも提供している。
さらに踏み込んだサポートとして行うのが「AI導入伴走サービス」と称するAI導入支援だ。顧客からは「技術顧問を務めてほしい」という依頼も多く、まさに顧問のようなサービスとして行っている。
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