TSMCが先端ノードのウエハー価格を大幅値上げへ:NVIDIAやApple、Qualcommの反応は?(1/3 ページ)
半導体製造プロセスにおいて、次世代ノードへの移行は「価格高騰」を意味するようになりつつある。TSMCは、5nm世代未満の先端ノードの価格を2026年から5〜10%上げる予定だという。顧客各社はどのような反応を示しているのだろうか。
世界の半導体業界は、深刻な経済変革期を迎えており、トランジスタのコストが予測通りに下がり続ける時代は終わろうとしている。この変革を先導しているのがTSMCだ。
この構造的変化の中核は、TSMCによる最先端ロジックチップに対する前例のない値上げの決定である。これは、天文学的な設備投資や地政学的な圧力、オングストロームスケールでの製造における厳しく、いかんともし難い物理法則による必然的な動きである。
TSMCは、先進ロジック製造の揺るぎない世界的リーダーであり、2025年第2四半期時点でファウンドリー売上高全体の70.2%という圧倒的シェアを誇る。同社は、技術的優位性を生かして次世代イノベーションに資金を投入している。この戦略は、デジタル経済全体の基盤となるコンポーネントのコスト基準を恒久的に引き上げるものである。
転換点を迎えた「ムーアの法則」
「ムーアの法則」は数十年にわたり、デバイスの性能を指数関数的に向上させると同時に、トランジスタ当たりのコストの低下によって、半導体の価格が下がることを約束してきた。この法則は今、転換点を迎えている。
報道によれば、TSMCは近く、先進ノードの値上げを実施するという。具体的には、5nm世代未満の先端ノードの価格を2026年から5〜10%上げる予定だという。だが、戦略的に最も重要な調整は、2nmノードへの飛躍に伴うものである。
2nmで製造されるウエハーの価格は、前世代と比べて50%以上急騰すると予想される。3nmプロセスの300mmウエハーの現在のコストは約2万米ドルだ。50%値上げされると、2nmウエハー1枚の価格が前代未聞の3万米ドル以上に上がることになる。
この劇的な値上げは、製造コストが高密度化による経済的メリットだけでは相殺できないほど速いペースで上昇していることを意味している。
今回のトランジスタ単価の上昇は、主要なノード移行において初めてのこととなる。この構造的変化は、半導体技術の“最高峰”へのアクセスがもはやコモディティではなく、プレミアムで交渉の余地のないサービスとなったことを業界全体に示している。
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