新人でも怖くない ベテランに代わって現場を導くメタバースAIエージェント:CEATEC 2025 日立製作所(1/2 ページ)
日立製作所は「CEATEC 2025」に出展し、メタバース空間で現場作業を支援するAIエージェント「Naivy(ナイビー)」を紹介した。手順書や熟練者のノウハウ、現場のリアルタイムデータをもとにチャット形式で作業指示などを行い、非熟練者が単独で作業にあたる際の心理的負担を軽減。知見の継承を容易にする。
日立製作所は「CEATEC 2025」(2025年10月14〜17日)に出展し、メタバース空間で現場作業を支援するAIエージェント「Naivy(ナイビー)」を紹介した。
現場そっくりのメタバース空間上でリアルタイム指示
Naivyは、製造業/建設業などの現場を再現したメタバース空間上にマニュアルやナレッジを統合し、必要な情報をリアルタイムで提供して作業を支援するAIエージェントだ。
現在、少子高齢化の進行による労働力不足が深刻になっている。製造業などの現場では若手だけでなく指導する側の熟練人材も不足していて、知見の継承が課題となっている。日立製作所はブースで実施したセミナーで「自分が製造現場の保守を任された新入社員だと想像してみてほしい」と呼びかけた。上司は複数の工場を掛け持ちしていてその場におらず、1人で設備を点検しなくてはいけない。そうした状況で心理的負担を感じる非熟練者は多いという。
Naivyは、そうした課題に向けたものだ。日立製作所は「現場拡張メタバース」と称する独自技術を開発している。360度カメラで実際の現場をスキャンして仮想空間上に再現し、各機械の手順書や作業履歴、作業時の映像、音声などさまざまなナレッジをひも付けたもので、作業者はこの中を自由に動き回りながら情報にアクセスできる。
Naivyは、この現場拡張メタバースの情報に、現場での稼働状況や不具合データをリアルタイムに統合し、チャット形式で作業者に必要な情報を提供する。
「バルブを30度開けて」 詳細な作業指示も
活用例として、ある設備のセンサーが異常値を示しているケースを想定する。経験の浅い作業者はセンサーの位置も、異常値の原因も分からない。こうしたとき、Naivyはまず作業者にセンサーの位置を示してくれる。さらに作業者が「想定できる原因を挙げてください」と質問すると、Naivyは現場拡張メタバース上の情報やリアルタイムなデータから原因を推定し、「○○のバルブを調節してください」などと、必要な作業の指示も行う。
バルブの位置や調節方法が分からない作業者が「実際のバルブを確認したいので見せてください」と打ち込むと、Naivyはメタバース上でバルブがある位置まで移動し、実物を表示する。その上で、バルブを回す方向や角度まで示すという。日立製作所の説明員は「これが通常のAIエージェントと異なる、Naivyならではの特徴だ。チャット上で答えてくれるだけでなく、メタバース上で視覚的に示せるので、作業者が迷わない」と説明する。作業者はNaivyと対話して必要な作業を把握し、最終確認のみ熟練者に仰ぐようにすれば、最初から最後まで付き添わなくてよいので熟練者の負担も軽減できる。
現在は非熟練者へのサポートを主な用途としているが、将来的にはNaivyがロボットに直接指示を出せるようにし、さらなる省人化に貢献することを目指すという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.