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製造自立へ拠点拡大と強靭化を進めるTIの戦略 EMEA担当プレジデントに聞くAI/GaNなどの新技術にも注力(1/2 ページ)

Texas Instrumentsは半導体製造における自立性を高めるため、2030年までに自社生産能力を95%超に拡大するという目標を掲げている。同社の欧州/中東/アフリカ地域(EMEA)担当プレジデントであるStefan Bruder氏に独占インタビューを行い、同社工場の生産能力拡大や、設計のスピード、インドにおける事業計画などについて話を聞いた。

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 米国EE TimesはTexas Instruments(以下、TI)の欧州/中東/アフリカ地域(EMEA)担当プレジデントであるStefan Bruder氏に独占インタビューを行い、同社工場の生産能力拡大や、設計のスピード、インドにおける事業計画などについて話を聞いた。

 TIは、半導体製造における自立性を高めるため、2030年までに自社生産能力を95%超に拡大するという目標を掲げている。Bruder氏は「われわれは、地政学的に安定した生産能力を実現すべく、複数の地域で工場投資を進めているところだ」と述べる。

「2030年までに自社生産95%」を目指して投資拡大

Texas Instruments EMEA担当プレジデント Stefan Bruder氏
Texas Instruments EMEA担当プレジデント Stefan Bruder氏 出所:TI

 Bruder氏はEE Timesの独占インタビューにおいて「未来は不確かなので、柔軟性が必要だ。われわれが自社生産に投資しているのはそのためであり、2030年までに自社生産能力を95%以上まで引き上げることを目指している。TIは世界中のさまざまな地域に製造拠点を置き、双方向の生産体制で稼働させている。各地域間で生産を切り替えることで、世界が絶え間なく変化する中でも継続性を確保し、適応できる」と述べている。

 TIは2025年6月に、長期経営計画を更新した。その計画では、2021年から米国テキサス州とユタ州の3つの大型拠点にある7つの工場に600億米ドル相当の投資を行うとしていて、その中にはテキサス州シャーマンの300mmウエハー対応新工場に対する最大400億米ドルの投資も含まれるという。この複合型プロジェクトにより、6万人超の雇用が見込まれている。同社は現在、全世界に15カ所の製造拠点を置いていて、そのうちテキサス州リチャードソンとユタ州リーハイで300mmファブを稼働させている。顧客企業には、AppleやFord Motor、Medtronic、NVIDIA、SpaceXなどが名を連ねる。

 TIがこのような拡大計画を進めているのは、自動車やスマートフォン、データセンター向けの半導体需要の高まりに対応すると同時に、基礎的なローエンドチップの中国メーカーとの競争が激化する中で、世界的な位置付けを強化していくためだ。TIのアプローチは、工場だけにとどまらず、原材料の調達にも適用される。Bruder氏は「各製造拠点で材料を現地調達できるようにすることで、供給のレジリエンスを強化し、他の地域への依存を低減したい」と述べる。

 また同氏は「TIのAI分野における取り組みは、大規模データセンターとエッジデバイスの両方に及ぶ。AIデータセンターは膨大な電力を消費する。当社の窒化ガリウム(GaN)製品は、電力効率を向上させ、データセンターのエネルギー使用量を低減する」と説明している。

 GaN技術も大きく勢いを増していて、最初に世界展開されている用途としては、スマートフォン/ポータブルデバイス用の小型充電器などがある。Bruder氏は「顧客企業は、GaNが提供する効率性と小型フォームファクターに注目している」と述べる。

 また同時に、TIはAI機能をデバイスに直接組み込もうとしている。Bruder氏は「例えば、TIのリアルタイムマイコンファミリー『C2000』には、太陽光発電インバーターのスパーク検出に適したニューラルネットワーク機能が組み込まれていて、デバイスメーカーがエッジデバイスにAIを統合しやすいよにしている」と述べ、「これらのイノベーションの多くは、TI最大の研究開発拠点の1つであるインドで、TIのグローバルなエンジニアリング、設計、製造チームと連携して開発されている」と付け加えた。

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