独自技術で攻めるサンケン電気のGaN戦略 30年には縦型量産も:サファイア基板&PSJ技術(1/3 ページ)
サンケン電気がGaNパワーデバイス市場への本格参入を狙っている。競争も激化しているが、高耐圧かつ低コストを実現する独自技術の横型GaNで差別化を図る他、2030年度には縦型GaNの量産も計画しているという。今回、同社幹部に詳細を聞いた。
2023年には400億円の市場が、2029年には3000億円規模に――。民生や車載、さらにAIサーバ分野などを中心に急成長が見込まれる窒化ガリウム(GaN)パワーデバイス市場に、サンケン電気が本格参入を狙っている。競争も激化しているが、高耐圧かつ低コストを実現する独自技術の横型GaNで差別化を図る他、2030年度には縦型GaNの量産も計画しているという。今回、同社技術開発本部プロセス技術統括部長である半貫恵司氏および、同本部パワーデバイス開発統括部長の小池憲吾氏に詳細を聞いた。
パウデック買収で得た独自技術を生かし、再参入へ
サンケン電気のGaNデバイス開発の歴史は長く、20年以上の歴史がある。もともとは青色LEDから始まり、2000年頃からGaN on シリコン(Si)のGaNパワーデバイスの開発にも着手。2015年頃には初のGaN HEMT搭載の電源ICをリリースしていた。さらにその後、LED照明用にGaN HEMTとICを組み合わせたドライバーも開発し量産。「LED電球が出始めたころにこのデバイスが使われ、好評だった」(半貫氏)が、次第に需要が減っていき2023年頃に生産を終了。ここでいったんGaN on SiのGaN HEMTデバイスの開発は終了したという。
しかし、GaNパワーデバイス市場は、2023年の400億円から2029年まで年平均成長率(CAGR)40%で伸び、3000億円規模となることが見込まれる成長市場だ。サンケン電気は2024年度からスタートした「2024年中期経営計画」(2024〜2027年度)において、新技術領域として化合物デバイスに注力する要素開発を掲げ、将来に向けた成長にも積極投資を進めていくと表明。社外との協業によるスピードを重視したGaNデバイス開発/量産化を進める方針を示していて、その一環として2025年4月、パウデックを約13億円で買収。2025年10月1日には吸収合併した。
獲得したパウデックの技術とこれまで培ってきた自社技術/ノウハウを組み合わせた、新たな方向性のデバイスによって競合との差別化を図り、競争が激化するGaN市場に勝負を仕掛ける方針だ。
半貫氏は「Siでは高耐圧プレーナーMOSFETからスーパージャンクションMOSFETへと主流が移った。当初は『高くて使えない』といっていたものが、価格が急速に下がって普及している。GaNもそうした段階にあるのではないか。いまやらなければ、後発の中でも追い付くことができないラインにいると思っている」と語っていた。
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