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最新ドローンを分解 本体も中身も中国勢が圧倒この10年で起こったこと、次の10年で起こること(98)(1/3 ページ)

2025年に発売された最新ドローンを分解する。ドローン分野は中国メーカーがけん引しているが、中身のコンポーネントもほぼ中国製が占めていた。

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 今回は2カ月前から予定していた、2025年に発売された一般入手可能なドローン数機種を報告する。弊社では現在、カスタム依頼なども含めて複数機種のドローンも解析しており、さらに2025年に発売されたロボットなども解析している。ここで報告できないものも多々あるが、来年(2026年)は、高価ではあるが2機種ほど、2足歩行ロボットを購入し、実際少し使った後にここでも報告したい。

 なぜ冒頭でこのような書き出しから始まったかというと、ドローンもロボットも、中身はほぼ同じコンポーネントで構成されているからだ。エレクトロニクスとセンシングとモーター制御の3つが、ドローンにもロボットにもほぼ同じように搭載されている。現在、2025年に市場投入された最新の先進運転支援システム(ADAS)用電子制御ユニット(ECU)も複数を解析しているが、こちらも精度や機能などの差こそあれ、内部の構成は最新のドローンやロボットに似通っている。実際に、ADASに使われるチップやモジュールが高度なドローンにそのまま使われている事例も多々確認できている。NVIDIAやQualcommのチップセットやコンピュータモジュールは、車載分野でも見かけることが多いが、同じものがドローン、ロボットにも採用されている。

プロペラが折りたためる「DJI FLIP」

 図1は2025年1月にDJIが発売したユニークな形のドローン「DJI FLIP」の様子である。空撮用のミドルサイズのドローンで、ホイール形状のプロペラが折りたたまれており、簡単に広げられる構造になっている。DJIの他のドローンとフライト性能はほぼ同じだが、インターネット配信などを想定したものとなっており、Vlog Droneとして扱われている。プロペラが剥き出しになっているタイプに比べ、折りたたみ型のホイール形状は、クローズ状態で安心して持ち運ぶのにも適している。

図1:2025年1月に発売された「DJI FLIP」(249g)
図1:2025年1月に発売された「DJI FLIP」(249g)[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 図2左はDJI FLIPの内部コンポーネント一式である。基板は3つ。プロセッサおよび通信基板、モーター駆動基板、慣性計測ユニット(IMU)およびGNSS基板だ。さらに、衝突回避などフライト用のカメラ、空撮用カメラで構成されている。空撮カメラは向きを変えられるジンバルも組み込まれている。図2右はDJI FLIPに組み込まれるLiDARの様子である。VCSELとCMOSイメージセンサーの組み合わせで構成されている。ともに中国メーカーのコンポーネントだ。

図2:DJI FLIPの内部コンポーネント
図2:DJI FLIPの内部コンポーネント[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 図3はDJI FLIPのプロセッサ基板の様子を示している。システム制御マイコンは中国HDSC社、通信は中国UNISOC社、メインのプロセッサは省略しているが、DJI製、プロセッサに接続されるDRAMは中国CXMT社。ほぼ中国半導体で構成されている。

図3:プロセッサ基板の様子
図3:プロセッサ基板の様子[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 図4は2025年5月に発売されたDJIのハイエンドドローン「DJI MAVIC 4 Pro」の様子である。詳細スペックだけでもずぬけたものになっている。広角の先進飛行支援システム(APAS)を支えるカメラが機体上部、機体下部に設置されていて、フロントにはLiDARなども設置され、文字通り360度を常時監視しながらのフライトが可能だ。水平360度監視の車載ADASに構成は似ているが、DJI MAVIC 4 Proでは水平方向に加え、垂直方向のセンサー監視も行っており、球形360度監視のカメラ、センサー配置になっている。前方には3眼の高度な空撮カメラおよび3軸ジンバルが設置されている。DJIは2017年、スウェーデンの老舗カメラメーカーであるハッセルブラッド(Hasselblad)を買収していて、以降ハッセルブラッドのカメラがDJIのコアコンピタンスの1つになっている。

図4:「DJI MAVIC 4 Pro」の外観
図4:「DJI MAVIC 4 Pro」の外観[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

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