極限環境に挑む「SiCのLSI」 目指すは原発事故処理や金星探査:広島大学 半導体産業技術研究所 教授 黒木伸一郎氏(1/3 ページ)
次世代パワー半導体材料として活用が進む炭化ケイ素(SiC)だが、その応用先はパワー半導体のみにとどまらない。高温動作や耐放射線性といったシリコン(Si)を大きく上回る特性を生かし、極限環境で動作するLSIへの応用に向けた研究が進んでいる。SiC LSIの利点や実用化に向けた研究動向について、広島大学 半導体産業技術研究所 教授 黒木伸一郎氏に聞いた。
次世代パワー半導体材料として活用が進む炭化ケイ素(SiC)だが、現在、パワー半導体以外の用途でも研究が進んでいる。
広島大学 半導体産業技術研究所 教授の黒木伸一郎氏は、SiCを用いたLSI(SiC LSI)の研究を行っている。SiC LSIの利点や実用化に向けた研究動向について、黒木氏に聞いた。
「原発事故処理に使える半導体を」 メガグレイ級ガンマ線にも耐えるSiC
――SiC LSIの利点と想定される用途について教えてください。
黒木伸一郎氏 シリコン(Si)を大きく上回る高温動作と耐放射線性だ。Si LSIでは難しかった150〜500℃の高温での領域や、耐放射線性では1k〜5MGy以上の領域でも使用できる。
これを生かせる用途として、福島第一原子力発電所の廃炉対応のためのSiC CMOSイメージセンサーや、高温動作可能な電気自動車(EV)用SiCゲートドライバー回路などの研究開発を進めている。廃炉対応に向けてはダイヤモンド半導体デバイスも開発されているが、ダイヤモンドが適するのはアンプやセンサーで、素子数を増やす用途にはSiCのほうが適している。
加えて、世界では米航空宇宙局(NASA)などが宇宙、特に金星探査用途での研究を進めている。
――SiCといえばパワー半導体材料という印象が強いですが、LSIでの活用に着目したのはなぜですか。
黒木氏 直接的なきっかけは東日本大震災だ。震災後の2011年度は東北大学の教員として震災復興対応にあたっていた。もともとはSiの研究をしていたが、2012年に広島大学に着任した際、前任者を引き継ぐ形でSiCパワーデバイスの研究を始め、SiCが放射線に強いことに気が付き、原発の事故処理などに生かせると考えた。
当時、中国地域では京都大学 名誉教授の松波弘之氏が委員長を務める「中国地域におけるパワー半導体の現状整理と関連事業の参入可能性調査委員会」が立ち上がっていて、そこでSiCのパワーデバイス応用について広く見ることができた。2013年度はスウェーデン王立工科大学でSiC LSIの研究開発を行っていたCarl-Mikael Zetterling氏を訪ね、ディスカッションの機会を得た。すぐに試作できるわけではないので、TCAD(Technology CAD)などでデバイスのシミュレーションを行いながら、最適構造とデバイスパラメータについて考えていった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
