2026年半導体市場の3大トピックを深掘り ―― DRAM不足の真相とTSMC、Intelの逆襲:大山聡の業界スコープ(97)(1/2 ページ)
2026年の半導体市場を占う「10の注目トピック」の中でも、特に反響の大きかった3点を徹底深掘りする。
前回は「2026年の半導体市場を占う10の注目トピック」について述べたところ、非常に多くの方から反響やコメントをいただいた。拙著記事が多くの方にご愛読いただけたことは誠に光栄であり、この場をお借りして感謝の意を申し上げたい。ただし項目を10個も列挙したことで、全体的には深堀りができず、やや中途半端な紹介だけで終わってしまった部分もあったことは否めない。今回は10項目の中で、その後も多くの方と議論のネタになった3点に絞って、2026年の注目点をもう一度整理してみたいと思う。
1.DRAM市場の見通しについて
DRAM市場の見通しは現在最も注目されている点ではないだろうか。少し詳しく振り返ってみると、2025年10月の段階ではまだ話題になっていなかった。今にして思えば、10月初旬に「OpenAIが大手DRAMメーカー各社とDRAM供給に関して協議している」といった報道があって、この辺りからDRAM不足の兆候が始まっていたのかもしれない。だが、筆者自身もこの時点でそのような認識はなかった。ところが2025年11月になって、DDR5のスポット価格が急騰し始め、突然騒がれ出したのである。理由は前回も述べた通り、データセンター向けのAI需要が増えたことだ。
もう少し詳細に述べると、広帯域メモリ(HBM)でトップシェアを誇るSK Hynixが通常DRAMの量産分を減らしてHBM増産を加速させたこと、Samsung Electronics、Micron Technologyが通常のDRAMの需要もデータセンター向けが加速して伸びていることを理由に出荷先を切り替えたこと、が要因である。そしてこの動きは一時的な現象では終わりそうにない。仕掛け人はNVIDIAだ。
NVIDIAは大手DRAMメーカーたちとSOCAMM(Small Outline Compression Attached Memory Module)という新規格を開発し、データセンターにおけるAI機能拡充のためにHBMだけでなく通常のDRAMも活用する戦略を立ち上げた。HBMは通常のDRAMとはチップの構造が異なる上、GPUと同一パッケージに組み込むために拡張性もない。これに対してSOCAMMはHBMほどの高速性はないが、通常のDRAMが活用でき、モジュールタイプなので拡張性もある。DRAMメーカーにしてみれば、同じDRAMがPCやスマホ向けよりも高く売れるとなれば、NVIDIAの誘いに乗った方が得だろう。SOCAMMという規格は2025年前半から存在していたが、採用事例としてはあまり多くなかった。しかし2025年後半にはSOCAMM2が規格化され、これは2026年から本格的に需要が立ち上がる見込みである。
これが2025年年末から2026年年始にかけてDRAM市場で発生していた動きである。DRAM単価は2026年2月に入っても上昇が続いており、この影響はNAND型フラシュメモリの需要増、単価上昇をも引き起こしている。データセンターにおけるSSD需要がDRAM需要増と連動して起こっていること、PCメーカーやスマホメーカーが、DRAM不足をストレージ(SSD)容量増でスペックを補おうとしていること、などが主な要因である。
「2026年はPC市場もスマホ市場もマイナス成長に終わる」と予測する調査会社が多いのも昨今の特徴だろう。これは需要減少によるものではなく、メモリ調達が困難になること、無理して調達しても部品コストが上昇してしまうので、生産量を制限せざるを得ないこと、が理由のようだ。
では、この状況がいつまで続くのか。DRAM不足は長期に渡って続くのだろうか。
これまでのパターンで言えば、メモリ市場の成長率は2017年中ごろにピークを迎え、2019年中ごろにボトム、2021年後半にピークを迎えて2023年中ごろにボトムと、4年周期のサイクルを繰り返してきた。このパターンであれば、2025年がピークで2027年がボトム、という予想になるのだが、ややこしいことに伸び率だけを見ると、ピークはすでに2024年で到達しており、2025年は前半が下降、後半から上昇と、従来のパターンとは異なる動きをしている。上のグラフを見ても分かる通り、ハッキリしているのは、今回の出荷実績が前回、前々回のピークよりもはるかに高いこと、そして現時点でまだピークアウトが確認できていないこと、の2点である。
今後の見通しについては「2026年末までDRAM不足はほぼ確実に続く」「DRAM大手ユーザーたちは、すでに2027年分の調達を議論している」「2028年にはDRAM不足が解消されるだろう」といった意見が多いようだ。ちなみに筆者は本連載で「2026年後半には状況が一変する可能性もある」と述べている。このような意見はかなり少数派で、大抵は「なぜそう思うのか」と聞かれるのが現状だ。理由としては、現在の不足状態/取り合い状態が過熱していること、ユーザー同士が「取り合いに負けまい」と実需よりも多めの発注をかけて仮需が膨らんでいる(に違いない)こと、を挙げている。数年前、車載半導体不足が社会問題に発展した際も、ユーザー同士の取り合いが仮需を膨らませ、後に大量の在庫問題を発生させた。現時点でDRAMの仮需が膨らんでいることは間違いない。これがいつ露呈するのか、どの時点で取り合いに終止符が打たれるのか。これが分からないから見方が分かれるのである。
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