創薬での量子コンピュータ使用が現実的に 富士通/阪大:計算リソース削減の新技術(1/2 ページ)
富士通と大阪大学 量子情報・量子生命研究センター(以下、大阪大学)は、量子コンピュータの計算リソースを削減する新技術を発表した。新素材開発や創薬など、化学材料の物性計算への量子コンピュータ適用を目的とした取り組みで、量子ビット数が少なく、誤り耐性量子計算が十分に実現できないとされる量子コンピュータでの化学計算が現実的になる見込みが得られたという。
富士通と大阪大学 量子情報・量子生命研究センター(以下、大阪大学)は2026年3月25日、独自の量子計算アーキテクチャの最新バージョン「STARアーキテクチャ ver.3」など、量子コンピュータの計算リソースを削減する新技術を発表した。新素材開発や創薬など、化学材料の物性計算への量子コンピュータ適用を目的とした取り組みだ。
独自の量子計算アーキテクチャ「STARアーキテクチャ」
量子コンピュータは量子ビットを計算に使うが、熱雑音などのノイズが量子の重ね合わせ状態を破壊し、計算エラーを引き起こす「量子エラー」の問題がある。これを防ぐため、複数の物理量子ビットを連携させて1つの論理量子ビットを形成し、量子エラーを訂正しながら計算する「誤り耐性量子計算(FTQC)」が用いられる。
実用的な計算を現実的な時間内で行うには、一般的に100万量子ビット規模の量子コンピュータが必要とされる。100万量子ビット規模への到達には長い年月がかかるとされ、実装される量子ビット数が少なく、FTQCが十分に実現できないと考えられている時代は「Early-FTQC時代」と呼ばれる。
FTQCでは、論理量子ビットを操作する基本量子ゲートを組み合わせ、計算を行う。固定角の回転である論理Hゲート、論理Tゲートを複数回繰り返すことで任意角の回転を実施してきたが、富士通と大阪大学は2023年に、論理Tゲートを任意角だけ回転させられる「位相回転ゲート」に置き換えた独自のアーキテクチャ「STARアーキテクチャ」を確立。計算に必要な量子ビット数、位相ゲート操作数を1桁以上削減した。
位相回転ゲートは固定角の回転を繰り返すよりも効率的な反面、位相回転ゲート自体のエラーは訂正できない課題がある。2024年には、位相回転ゲートの精度を向上させ、計算規模を1000倍に拡大した「STARアーキテクチャ ver.2」をリリースした。これにより、Early-FTQC時代の量子コンピュータで高温超伝導などの固体材料物性を計算できる見込みが得られていたが、化学材料の物性計算には、より多くのリソースが必要だという。
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