560億ドル投資でも「需要に追い付けない」 AI急成長でTSMC表明:先端プロセスでは競合も追い上げ(1/2 ページ)
TSMCの2026年の設備投資額は560億米ドルに達する見込みだ。それでも、AI半導体の旺盛な需要に応えるには不十分だという。
TSMCは、急増するAI需要に追い付き、競合との差をさらに広げるべく、投資計画を拡大している。
世界最大の半導体ファウンドリーであるTSMCは2026年4月、「2026年の設備投資費は、約560億米ドルに達する予定だ。生産能力拡大に向け重点的に投資を行うことで、NVIDIAやAMD、AppleなどのAI関連顧客からの需要に対応していく」と述べている。しかし同社は、このように設備投資レベルを上げても、2027年の需要に対応するにはまだ不十分であるということは否定しなかった。
同社のCEOであるC.C. Wei氏は、2026年4月に行われた同年第1四半期の業績に関するカンファレンスコールで「新工場の建設には2〜3年を要するだろう。近道はない。さらに生産を拡大していくには、もう1〜2年はかかる」と述べている。
同社は、日本と台湾、米国において新工場の建設を急ぎ、3nm世代チップを製造する予定だという。2027年前半には台湾工場が生産を開始し、同年後半には米国工場が、2028年には日本が後に続く見込みだとしている。
また同社は、これまで数年間をかけて確立してきた3nmノードを適用した製造を、初めて拡大していく予定だという。この3nmプロセス技術には、同社にとってのライバル企業が存在しない。
Wei氏は「われわれはこれまで、ノードの生産能力が目標に達した場合、その能力を追加することはなかった。しかし現在、3nm技術の複数年にわたる強力な需要パイプラインに対応すべく、世界的に生産能力を拡大する計画を実行しているところだ。その用途先としては、スマートフォンや、HPC AI(広帯域メモリ[HBM]ベースダイを含む)、自動車、IoTなどが挙げられる」と述べる。
TSMCは2025年末に、業界最先端の2nmチップの生産を開始し、Samsung Electronics(以下、Samsung)やIntelなどの競合メーカーをリードしている。しかし、International Business StrategiesでCEOを務めるHandel Jones氏によると、TSMCのライバル企業も競争力を高めつつあるという。
追い上げるSamsung
Jones氏は米国EE Timesの取材の中で「TSMCは引き続き、技術/市場シェアにおいてリーダー的地位を維持していくだろう。しかし、Samsungの性能も大幅に向上しつつある」と述べる。
Samsungは、メモリ/ロジック事業部門の膨大な資金源に加え、ブランド化されたエレクトロニクス事業も保有しており、スケールメリットを享受している。2026年に入り、メモリ事業の利益も増大している。Jones氏の予測によると、2026年におけるSamsungのメモリ売上高は2000億米ドルを超え、営業利益は1200億米ドルを上回る見込みだという。
Samsungは、プロセス技術でも後れを取り戻しつつある。
「Samsungの『SF2P』(第2世代の2nm)は、PPA(Power, Performance, and Area)の面で『N2』(TSMCの2nm技術)と競争できるようになってきている。同社は数々の大口顧客を確保しており、やがて生産能力が限界を迎えることになるだろう」(Jones氏)
同氏は「世界第2位のファウンドリーであるSamsungは、米国テキサス州オースティンの生産能力を2倍以上に拡大し、月産ウエハー5万枚まで増加させる見込みだ。韓国内でも月産ウエハー2万枚を追加し、2nmウエハーの社内消費も拡大させている」と続ける。
一方、SemiAnalysisのアナリストであるSravan Kundojjala氏は「TSMCのライバル企業が意味のある方法で市場シェアを取り戻せるようになるのは、2028年以降になるだろう」と指摘する。
Kundojjala氏はEE Timesの取材に対し「TSMCは、N3/N2の歩留まりに関しては5年以上も早く有利なスタートを切っており、競合他社がその差を縮めることは不可能だ。ファウンドリー市場(売上高)におけるTSMCのシェアは、2020年の54%から、2026年には72%に増大し、この差は現在もさらに広がりつつある」と述べている。
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