ナフサ危機で迫る「レジスト供給途絶」――世界の半導体工場を停止させる、もう一つの臨界点:湯之上隆のナノフォーカス(91) He/ナフサ供給危機と半導体(3)(5/6 ページ)
中東情勢に伴うナフサ供給危機の影響は、フォトレジストにも及ぶ。それは「世界の半導体工場を停止させる臨界点」になり得るほど、多大なものだ。本稿では、主にリソグラフィ専門家に向けて、フォトレジストにおける「ナフサ供給危機」のリスクを詳細に解説する。さらに、リソグラフィ専門家に対する対策の提言と、政府・業界団体に対する提言をまとめる。
第5章:フォトレジスト供給途絶のシナリオ
前稿(90-2)の第5章で、筆者はHe/ナフサ/PFAS危機のタイムライン(第1〜4フェーズ)を論じた。本稿執筆時の4月27日現在、フォトレジストはこのタイムラインのどこに位置するか。
5.1 フェーズ別の影響パターン
第1フェーズ(0〜2カ月)
表面的には、フォトレジスト供給は正常に見える。レジストメーカーの在庫、ファブ側の在庫、輸送中在庫を合わせて、おおむね1〜2カ月分の在庫がある。しかし、特定PAG原料、特定モノマーの供給はこの段階で逼迫し始める。
第2フェーズ(2〜3カ月)
特定グレードのレジストで品薄が顕在化する。最も先に影響を受けるのは、量産規模が小さくPAG使用量の特異な先端EUVレジストである。ファブ側はレシピ変更の可能性を検討するが、認定済みレジストの変更には3〜6カ月の再認定が必要であり、間に合わない。
第3フェーズ(3〜6カ月)
複数のレジストメーカーで特定品番の供給停止または出荷制限が発生する。EUVラインから順に、リソグラフィ工程の歩留まりが低下する。この段階で、装置(EUV/ArF)は動いていても、レジストがないためにウエハーがロード待ちで滞留する事態が発生し始める。
第4フェーズ(6カ月以上)
複数の先端ファブで、特定レイヤーのリソグラフィ工程が不成立となる。レジストの在庫が完全に尽きたファブから順に、プロセス全体が停止する。代替レジストへの切り替えには再認定で最低18〜24カ月、新規分子設計を伴う場合は3〜5年以上もかかる。この間、当該ノードの量産は完全に停止する。
ここで、あらためて強調しておく。第2.5節で論じたPFAS Free/フッ素Freeレジストは、以上のフェーズのいずれの局面においても、救済策にはなり得ない。それらが量産投入されるのは2030年代以降であり、本稿が扱う数カ月〜半年、長くても1年〜数年スケールの危機には、原理的に間に合わないのである。
5.2 装置部材途絶との比較
前稿で論じたFFKM、PFPE、PFAの途絶と比較すると、フォトレジスト途絶は以下の点で性格が異なる(図5)。フォトレジスト途絶は、装置部材途絶よりも「停止の瞬間」が鋭く、影響範囲が広い。
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