超WBG半導体基板の大口径化へ道筋、東北大:直接窒化法で針状のAlN単結晶を育成:AlN単結晶基板の
東北大学は、直接窒化法を用い針状の窒化アルミニウム(AlN)単結晶を育成することに成功した。これを種結晶として溶液成長法により結晶成長させれば、大口径の超ワイドバンドギャップ(WBG)半導体基板を実現できるとみている。
最大毎時175μmの速度で横方向にエピタキシャル成長
東北大学多元物質科学研究所の李森助教、飴井千晃大学院生、安達正芳准教授、大塚誠准教授、福山博之教授らによる研究グループは2026年6月、直接窒化法を用い、針状の窒化アルミニウム(AlN)単結晶を育成することに成功したと発表した。これを種結晶として溶液成長法により結晶成長させれば、大口径の超ワイドバンドギャップ(WBG)半導体基板を実現できるとみている。
AlNは、バンドギャップが約6.2eVと極めて大きく、熱伝導性や化学的安定性に優れている。このため、深紫外線LEDやパワー半導体デバイスなどの基板材料として期待されている。ところが、従来の直接窒化法は強い駆動力下で行われるため、多結晶の粉末しか得られなかった。
研究グループは今回、熱力学計算に基づきアルミニウム蒸気を直接窒化させる工程で、合金組成や窒素分厚、反応温度を厳密に制御し、反応の駆動力を熱力学的平衡の近傍に維持できる新たなAlN結晶成長法を開発した。
具体的には、Fe-20mol% Al合金を用いた場合、Ar-4vol%N2下での臨界温度Tcは2084K(約1811℃)であることを突き止め、この温度近傍(2033K〜2153K)で実証実験を行った。駆動力を平衡点近傍まで制御したところ、新しい結晶核の発生を抑制できた。
この結果、長さが数センチメートルで直径は最大300μmの「針状AlN単結晶」を成長させることに成功した。特に、2073K(1800℃)で育成した六角柱状結晶は、X線ロッキングカーブ測定において、半値幅(FWHM)が約20arcsecという、極めて欠陥の少ない結晶性を示したという。
実験で得られた針状の単結晶を種結晶として、Fe-26mass%Crフラックスを用いた溶液成長法で結晶成長させた。溶液を1948Kから毎分0.05〜0.2Kのレベルで冷却し、過飽和度(駆動力)を制御した。そうしたところ、結晶性を維持しながら最大毎時175μmという成長速度で横方向にエピタキシャル成長させられることを確認した。水平配置の育成技術を導入したところ、ミリメートルという単位で、太さが均一な結晶を得ることに成功した。さらに、不純物である炭素濃度が約2桁も低減されることが分かった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
新型磁気メモリ開発に向けた基盤技術を確立、東北大ら
東北大学や総合科学研究機構、京都大学、慶應義塾大学の研究グループは、らせん磁性体を用いた新型磁気メモリ開発に需要となる基盤技術を確立した。今回の研究では、らせん磁性の巻き方を直接観測し、試料体積の90%以上という精度で巻き方を制御できることが分かった。
そっと触るだけで光る レアアース不要、電源不要の近赤外発光
東北大学の研究グループは、筑波大学や佐賀大学との共同研究により、酸化亜鉛の欠陥構造を制御することで、高価なレアアースを使わずに極めて高い感度の「応力発光」を実現した。電源不要の近赤外発光は、医療センサーやインフラ診断などへの応用が期待される。
テラヘルツ波帯で動作、東北大が6Gに向けた光スイッチ開発
東北大学の研究グループは、テラヘルツ波帯で動作する「光スイッチ」を開発した。第6世代移動通信(6G)に向けたフォトニック集積回路(PIC)の小型化や省電力化に貢献できるとみている。
反強磁性体で大きなTMR効果 超高速MRAM実現の可能性
東京大学とJSR、東京都立大学、東北大学の研究グループは2026年4月、ノンコリニア反強磁性体を用いた磁気トンネル接合(MTJ)を設計し、大きなトンネル磁気抵抗(TMR)効果が現れることを理論的に予測した。
全固体電池の製造プロセス簡素化、東北大が新手法
東北大学は、酸化物系全固体電池の製造プロセスを簡素化できる新たな界面形成手法を開発した。超音波接合法を用いることで、リチウム金属とガーネット型酸化物固体電解質(LLZO)の界面を室温かつ短時間で形成できるという。
電流印加で不安定な方位にスピンを安定化、東北大ら
東北大学や日本原子力開発機構らによる研究グループは、等方性磁石の薄膜を使って作製した素子に電流を印加し、不安定な方位に磁石の向き(スピン)を安定化させることに成功した。電流と外部磁場の大きさを調整すれば、スピンの揺らぎを最大化できる。この動きは連続的な変数を用いる制限ボルツマンマシンの動作原理に適用できるとみている。

