半導体製品の信頼性とサプライチェーンにおけるトレーサビリティの重要性(後編):半導体製品のライフサイクルに関する考察(11)(1/2 ページ)
半導体トレーサビリティの現状と課題、サプライチェーンのレジリエンス向上への影響を議論するシリーズ。今回は、COVID-19が示した教訓や、次世代のトレーサビリティ技術を紹介する。
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航空宇宙、医療機器、オートモーティブ、産業機器といった分野では、半導体製品が20年、30年という長期にわたり安定して供給・使用されることが求められる。こうした業界において重要となるのが、半導体製品の”トレーサビリティ”だ。
前編では、材料技術や保管技術の進歩により、「2年間のデートコード」ルールが既に技術的根拠を失いつつあることを示した。後編となる本稿では、長期ライフサイクル製品を支えるトレーサビリティの役割と、サプライチェーンレジリエンス向上への実践的なアプローチについて解説する。
長期ライフサイクル産業におけるトレーサビリティの重要性
製品ライフサイクルが長い航空宇宙、医療機器、オートモーティブや産業用制御システムに使用される半導体は、数十年にわたり機能する必要があり、半導体部品の調達や交換においても、短期消費型製品とは異なる課題が存在する。主な課題としては、製造中止(EOL)後も保守用などで製品が必要、再設計や再認証のコストが極めて高い、そして、偽造品や品質不良が人命や安全に直結する、といったことが挙げられる。このような環境では「いつ製造されたか」だけではなく、「どのような履歴を経てきたか」を証明できるトレーサビリティが不可欠になる。
トレーサビリティとは、半導体製品がオリジナル半導体メーカーで製造され、認定された正規流通チャネル内で管理され、適切な保管条件の下で維持されてきたことを記録し、製品が当初の仕様を満たし、ライフサイクル全体を通して認証されることだ。サプライチェーンの透明性を保つことで、下記の3つの課題に対応している。
偽造防止:偽造半導体は、航空宇宙、防衛、医療機器といった安全性が最優先される分野において、依然として重大な脅威となっている。ここで重要なのは、偽造リスクはデートコードの古さではなく、流通経路に起因するという点である。SAE AS6496のような規格では、正規販売代理店に対し、製品の保管管理記録および適合証明書(Certificate of Conformance)の維持を義務付け、製造から最終顧客までの真正性を保証している。
製造中止(EOL)品の管理:半導体製品のライフサイクルは年々短くなる一方で、それを使用するシステムは数十年稼働し続ける。このギャップを埋めるのが、トレーサビリティに基づくEOL管理だ。トレーサビリティが確保されていれば、認定された正規在庫の探索、互換性のある代替品の特定、保管条件・品質状態の確認が可能となり、不要な再設計や生産停止を回避できる。
不具合対応・リコール:品質問題や不具合が発生した場合、トレーサビリティにより影響を受けるロットを迅速に特定・隔離できる。例えば、湿気に敏感な製品を含むリコールでは、J-STD-033に準拠した保管が行われていたかどうかを確認することで、対応範囲を最小限に抑え、財務的・評判上のダメージを軽減できる。
業界別に異なるトレーサビリティ要件
特に製品ライフサイクルが長い業界では、故障時のコストが高く、交換製品の調達の難しいため、トレーサビリティシステムに対して独自の要求がある。
航空宇宙・防衛分野:航空機や防衛システムは25〜30年の運用を前提として設計される。FAAやEASAなどの規制当局は、交換部品に対しても製造履歴・保管履歴・流通履歴の完全な文書化を要求する。
医療機器分野:ペースメーカーや人工呼吸器などの医療機器では、ISO 13485などの品質規格により、トレーサビリティが安全性確保の要件となっている。リコール時に影響範囲を迅速に特定できるかどうかが、患者の安全を左右する。
オートモーティブ:電気自動車(EV)や自動運転技術の進展により、自動車分野でも半導体の信頼性要求は一段と高まっている。IATF 16949などの規格は、製造および品質保証プロセスの文書化を重視しており、トレーサビリティは前提条件となっている。
産業分野:産業用制御装置などは、数十年にわたり継続的に稼働することが多いPLC、モータドライブなどに依存しているため、メインテナンス中に調達された製品が、オリジナルの製品の使用と一致しているかの保証と信頼性を維持するため、トレーサビリティが重要視されている。
では、こうしたトレーサビリティを長期ライフサイクル製品で実効性あるものにするためには、半導体製品をどのように保管し、どの規格に基づいて管理・認証していくべきなのだろうか。
半導体製品の長期信頼性は、製造時点だけでなく、その後の保管方法、規格順守、トレーサビリティの維持によって左右される。特にライフの長いシステム向けでは湿気の侵入や、はんだ付け性の低下といった保管起因のリスク管理が重要となる。
J-STD-020は、湿度感度レベル(MSL)を定義し、組立前の許容暴露時間やベーキング要件を示す。また、JEDEC J-STD-033では、長期保管された半導体製品の信頼性は、保管環境と梱包仕様によって大きく左右されるため、相対湿度10%未満、温度5〜25℃といった管理環境を推奨しており、湿気に敏感な製品(MSD)には防湿袋(MBB)、乾燥剤、湿度インジケーターカードの使用が求められる。
これらの規格に準拠した保管が行われていれば、数十年以上経過した製品でも、電気特性やはんだ付け性が維持されることが、各種試験によって実証されている。さらに、適合証明書を含む文書管理はトレーサビリティの中核であり、AS6496に準拠した正規販売代理店は、製造元までさかのぼれる完全な履歴を保証することで、品質と真正性への不確実性を排除している。
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