量子コンピュータを光でつないで大規模化へ、富士通が試作機公開:ダイヤモンドスピン方式をシステム化(2/4 ページ)
富士通は、ダイヤモンドスピン方式量子コンピュータのプロトタイプを開発した。従来一般的な窒素-空孔(NV)センターではなく、発光効率に優れるスズ-空孔(SnV)センターを採用し、光接続による量子モジュールの大規模化を見据えた構成とした。将来的には、超伝導量子コンピュータ同士を接続する技術としての活用も目指す。
複数のモジュールを接続し大規模化の可能性も
光を使って量子状態を伝送できることも特徴だ。極低温で動作する量子コンピュータでは、1台の冷凍機に収容できる量子ビット数に物理的な制約がある。ダイヤモンドスピン方式では、異なるチップや異なる冷凍機に収めた量子モジュール間でも光を使って量子状態を伝送できるため、単一の冷凍機内に量子ビットを収める構成にとらわれず、複数のモジュールを接続して大規模化できる可能性がある。
動作温度は約−271.6℃で、超伝導量子コンピュータの典型的な動作温度である約−273.13℃より高い温度で動作する。一見するとわずかな差だが、絶対温度では約1.6Kと約0.02Kの違いになる。超伝導方式では希釈冷凍機が必要になるのに対し、ダイヤモンドスピン方式では機械式冷凍機を利用できるという。佐藤氏は「冷凍機のサイズなどに大きな違いが出てくる」と説明する。
富士通は2020年から、オランダのデルフト工科大学および同大学の量子技術研究機関QuTechとダイヤモンドスピン方式の共同研究を進めてきた。2025年3月には、NVセンターの電子スピンと核スピンを用いた2量子ビットゲート操作で99.9%を超える忠実度を達成し、エラー確率を0.1%未満に抑えた。
光接続を見据えSnVセンターを採用
今回のプロトタイプの大きな特徴は、量子ビットとして利用するカラーセンターだ。従来の研究では、ダイヤモンドの炭素原子の一部が窒素原子に置き換わり、その隣に空孔が形成されたNVセンターが広く利用されてきた。富士通も2025年の高精度量子ゲート操作の実証ではNVセンターを採用していた。
一方、複数の量子モジュールを光で接続する場合、カラーセンターからいかに効率よく光子を取り出せるかが重要になる。NVセンターではこの発光効率が課題になるという。
そこで富士通は、窒素の代わりにスズ(Sn)を利用したSnVセンターを採用した。富士通によると、SnVセンターはNVセンターと比べて約10倍相当の高輝度を実現できる。外部環境のノイズの影響も受けにくいという。
量子モジュール間を光接続する際には、それぞれの量子ビットから光子を発生させ、量子もつれ状態を生成する。この生成は確率的な処理になるので、発光効率が高まれば単位時間当たりの試行回数を増やせる。佐藤氏によると、SnVセンターの採用によってモジュール間の量子ゲート操作を高速化できるという。
佐藤氏は「モジュール間の光接続がダイヤモンドスピン方式の大規模化の鍵になる」との考えを示し、「そのためにはNVセンターより発光効率の高いSnVセンターが適している」と説明した。
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