ソニー、「業界初」製品で使い捨て内視鏡用イメージセンサー市場に参入:1mm角で5mのデジタル伝送(1/2 ページ)
ソニーセミコンダクタソリューションズ(以下、SSS)が、医療用シングルユース(使い捨て)内視鏡向けのCMOSイメージセンサー市場に参入する。SSSは2026年10月22日、同市場向けとして初めて開発した新製品「IMX742」を発表した。今回、SSSの担当者に開発の狙いや技術的な特徴を聞いた。
年平均22.9%増、30年に4200億円規模の成長市場
ソニーセミコンダクタソリューションズ(以下、SSS)が、医療用シングルユース(使い捨て)内視鏡向けのCMOSイメージセンサー市場に参入する。SSSは2026年10月22日、同市場向けとして初めて開発した新製品「IMX742」を発表した。1mm角の小型サイズながら、有効約51万画素、最大60フレーム/秒(fps)の撮像に対応すると同時に、5mのケーブルを介したデジタル伝送を実現。SSSによると、医療用シングルユース内視鏡向けイメージセンサーとして、1mm角というサイズと5mのデジタル伝送を両立したのは業界初という。今回、SSSの担当者に開発の狙いや技術的な特徴を聞いた。
シングルユース内視鏡は、使用後の洗浄や消毒が不要になり、感染対策や医療従事者の負担軽減につながることから、需要が拡大している。市場調査会社MarketsandMarketsが2025年10月に公表した調査によると、世界のシングルユース内視鏡市場は2025年の9億5000万米ドル(約1501億円/1米ドル=158円換算)から年平均成長率(CAGR)22.9%で伸び、2030年には26億7000万米ドル(約4219億円)に拡大する見通しだ。
SSSはこれまで、再利用を前提としたリユース内視鏡向けにイメージセンサーを提供してきた。CCDイメージセンサーの時代から同市場で事業を展開しているといい、近年ではCMOSイメージセンサーとして2025年に「IMX446」、2026年に「IMX447」も発表している。
SSSのイメージングシステム事業部でビジネスを担当する遠藤琢朗氏は「リユースとシングルユースの両方を重要な市場と捉えている」としつつ「特にシングルユースは今後の成長が期待できる分野であり、以前から顧客からも製品投入を求める声が寄せられていた」と説明する。
1mm角にA-D変換回路を搭載、51万画素を確保
IMX742は裏面照射型CMOSイメージセンサーで、有効画素数は720×720画素、画素ピッチは1.0μm、チップサイズは1.0×1.0mmだ。ローリングシャッターとグローバルリセットに対応し、30fpsまたは60fpsで動作する。
細径内視鏡向けのイメージセンサーでは、限られたチップ面積に画素部と周辺回路を収める必要がある。特にデジタル出力に対応するには、センサー内部にA-Dコンバーターを搭載する必要があり、小型化が課題となる。同事業部で設計を担当する鈴木篤史氏は「アナログ出力であれば必要のないA-D変換回路を、1mm角という限られた面積に収める必要があった。画素数を確保しながら周辺回路をいかに小型化するかが、開発上の大きな課題だった」と振り返る。
今回の開発では、必要な回路を見極め、機能を絞り込むなどして周辺回路の面積を抑えた。遠藤氏は「これまで培ってきた回路設計技術を生かしながら、本当に必要な機能だけを残すことで、小型化を実現した」と強調していた。
独自の双方向通信技術で小型化、細径化に貢献
さらにIMX742では、独自の双方向通信技術によって、映像信号とセンサーの制御信号を同じ信号線で伝送できるようにした。例えば、一般的な構成では映像信号の出力に2本の信号線を使用し、I2Cなどによるセンサー制御にも別途2本の信号線が必要になる場合がある。一方、IMX742では、映像信号の出力とセンサー制御に同じ2本の信号線を使用する。
鈴木氏は「映像信号を送る際にはセンサーから後段の回路に向けて信号を出力し、センサーを制御する際には逆方向に信号を送る。1組の信号線で双方向の通信を行うことで、必要な配線を減らせる」と説明。これによって、センサーの端子数を6個に抑えた。信号線を削減できるため、ケーブルの細径化や内視鏡内部の配線スペースの削減にもつながるという。
SSSは、こうした特性によって、気管支鏡や尿管鏡をはじめとする細径内視鏡のさらなる小型化/高画質化に貢献するとしている。
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