レゾナックはなぜ「今」300mm SiC基板を開発したのか:開発担当者に聞く(1/3 ページ)
レゾナックは、300mmの炭化ケイ素(SiC)単結晶基板の開発に成功した。ただし、SiCパワー半導体では現在、150mmから200mmへの移行が進んでいる段階だ。なぜ、このタイミングで300mm品を開発したのか。開発の狙いや技術的な課題、今後の市場展望、海外メーカーとの競争について、同社の担当者に聞いた。
レゾナックは2026年9月、直径300mm(12インチ)の炭化ケイ素(SiC)単結晶の成長と基板加工に成功したと発表した。SiCに関する国際会議「International Conference on Silicon Carbide and Related Materials(ICSCRM)2026」(2026年9月27日〜10月2日、パシフィコ横浜)では、開発した300mm SiC単結晶基板を初公開した。
SiCパワー半導体では現在、150mm(6インチ)基板から200mm(8インチ)基板への移行が進んでいる。一方で、その先を見据えた300mm品の開発も活発化していて、中国のSICCや米国のWolfspeedなどが相次いで開発成果を発表している。
こうした中、レゾナックはなぜ今、300mm品の開発に取り組んだのか。大口径化に伴う技術的な課題や今後の市場展望、競争が激化するSiC市場での戦略について、レゾナックの担当者に話を聞いた。
狙いは「150/200mm品の競争力向上」
レゾナックは現在、150mmのSiCエピウエハーを主力として量産しているほか、200mm品の出荷も開始している。今回、300mm品の開発に取り組んだことについて、レゾナックの担当者は「既存の150mm/200mm品の競争力を高めることが目的だ」と説明する。300mmのSiCエピウエハーを販売する具体的な計画はないという。
SiC単結晶は、口径が大きくなるほど結晶成長時の温度分布などを制御することが難しくなる。あえて300mmという大口径の結晶成長に挑戦し、そこで得られた技術を150mm/200mm品にフィードバックすることで、品質向上につなげる考えだ。
デバイス量産の300mm移行にはデバイスメーカーの設備環境が重要
では、SiCパワー半導体の量産に300mm基板が使われるのは、いつごろになるのか。現在、SiCパワー半導体では150mmから200mmへの移行が進んでいるものの、200mm品が主流になるのは2030年前後との見方もあるという。300mmへの移行が本格化するとすれば、それより先になるとの認識だ。
ただし、200mmへの移行が進んだからといって、必ずしも300mmへの移行が始まるとは限らない。大口径化が進むかどうかは、デバイスメーカー側の設備環境にも左右されるので、基板の開発だけが進んでも、移行が実現するわけではない。
レゾナックによると、現在進んでいるSiC基板の200mm化には、シリコン(Si)半導体の300mm化が関係しているという。Si半導体の製造が300mm基板へ移行したことで、200mm対応の製造設備に余力が生まれた。SiCではSiと全く同じ装置を使用できるわけではないものの、評価装置など一部の設備は共用できるので、デバイスメーカーがSiCの200mm化を進めやすい環境が整ったとみられる。同様に、SiCの300mm化でも、デバイスメーカーが300mm対応の製造設備をSiC向けに利用したいと考えることが、重要な条件の1つになる。
コストやSiCパワー半導体の需要拡大も課題に
加えて、基板そのもののコストも課題だ。大口径化には、1枚のウエハーから製造できるチップ数を増やし、チップ当たりの製造コストを引き下げるメリットがある。一方で、300mm基板の価格や設備投資が大きければ、必ずしもコスト削減につながるとは限らない。レゾナックは「デバイスメーカーが300mm基板を採用したいと考える価格水準になることも必要だ」と指摘する。
さらに、SiCパワー半導体そのものの需要拡大も欠かせない。電気自動車(EV)などの車載用途に加え、AIデータセンターなどでもSiCデバイスの採用が広がり、大量に製造する必要性が高まれば、大口径化のメリットも大きくなる。
レゾナックは、300mm品の事業化について、顧客であるデバイスメーカー側の需要に応じて対応する方針だとしている。デバイスメーカーから要望があり、材料の供給を求められれば、それに応じて開発を進めることになるとしている。
レゾナックは、競合各社が300mm品の開発成果を発表している背景についても、必ずしも早期の量産移行を目指したものばかりではないとみている。「300mmという大口径品を製造できる技術力を示すことで、それより小さい150mm/200mm品でも高品質な製品を製造できるとアピールする意味合いもあるのではないか」(レゾナック担当者)
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