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宅内AV機器の無線接続、WirelessHDとWHDIが激突か無線通信技術 ミリ波(1/2 ページ)

無線機能を搭載したテレビ受像機が、複数のメーカーから続々と製品化されている。しかし、各社が採用する無線通信方式は一本化されていない。どの方式が将来主流になるのかは、混沌(こんとん)とした状況だ。

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 高品位(HD)映像を無線でやりとりする――このような無線機能を搭載したテレビ受像機が、複数のメーカーから続々と製品化されている。しかし、各社が採用する無線通信方式は一本化されていない。どの方式が将来主流になるのかは、混沌(こんとん)とした状況だ。60GHz帯を使って最大4Gビット/秒(bps)のデータ伝送速度を得る「WirelessHD」や、5GHz帯の40MHz幅を使って最大3Gbpsのデータ伝送速度を得ると主張する「WHDI(Wireless Home Digital Inter-face)」が候補に挙がっている。さらには、無線LAN規格の最新版「IEEE802.11n」を利用する動きもある*1)

 採用する方式を選ぶ際の決め手は何か。これには、さまざまな意見がある。「映像品質」に対する考え方や、最終製品出荷のタイミング、半導体チップのコスト、さらには利用する周波数の違いに起因した各種特性の違いや、技術的な実現難易度など、複数の要因が複雑に交ざり合い、どの方式が優位なのかはっきりとしない。無線機能を搭載したAV機器の市場投入は今後も活発に進むとみられる。複数の無線通信方式が真っ向からぶつかる構図になりそうだ。デファクト・スダンダード(事実上の標準)の獲得に向けた争いが始まろうとしている。

*1)米W&W Communications社は、IEEE 802.11nに準拠した無線チップと、同社のH.264対応の低遅延コーデックICを組み合わせた参照設計(リファレンス・ボード)の提供を2008年11月ころに開始する。無線LANチップの設計・開発を手掛ける半導体ベンダーも、映像伝送に今後注力する考えだ。台湾Ralink社は、映像の伝送機能を強化した無線LANチップのサンプル出荷を2009年第1四半期に始める。

準備は整いつつある

 WirelessHDとWHDIはいずれも、非圧縮でHD映像を無線伝送することを訴求する方式で、それぞれの普及促進を目的にしたコンソーシアム(業界団体)がある。宅内のさまざまなAV機器を無線で相互接続し、自由にコンテンツをやりとりできるようにするという将来の見通しは、WirelessHDコンソーシアムとWHDIコンソーシアムともに同じである。各コンソーシアムでは普及促進に向けて、無線での相互接続を実現する規格と認証試験の準備をそれぞれ進めている(図1)。

図1
図1 モジュールや参照設計の準備も進む (a)WirelessHD規格に準拠した無線モジュール。上側はパナソニック、下側は村田製作所が製造した。(b)イスラエルAMIMON社が現在提供している参照設計。5GHz帯の20MHz幅を使って最大1.5Gビット/秒を得る。

 WirelessHDコンソーシアムは、WirelessHD規格を2008年1月に発表済みである。現在、認証試験(コンプライアンス・テスト)の策定作業が最終段階に入っており、2008年末までに完了する予定だ(図2)。「2009年の非常に早い段階に認証試験をスタートする」(WirelessHDコンソーシアムのChairmanを務めるJohn Marshall氏)。「2009 International CES」の会期中に、認証試験やロゴ付与プログラムについて、何らかの発表がある可能性が高い。その後、2009年初頭には、認証試験を通過してWirelessHD規格の正式準拠をうたう半導体チップが米SiBEAM社から市場に投入される見込みだ。

図2
図2 両派の今後の見通し 規格策定に関しては、WirelessHDが先行している。WHDIコンソーシアムも規格の策定作業を進めており、2008年末までには完了させる予定である。

 現在、WirelessHD規格の採用を表明している東芝やパナソニックは、製品化に向けた取り組みを着実に進めている。例えば「CEATEC JAPAN 2008」では、国内で初めてWirelessHDによるHD映像の無線伝送についてデモを見せた。現在、同社らはSiBEAM社が提供するチップ・セットのファースト・サンプル品およびこれを搭載したリファレンス・ボードを使った開発を進めている。今後の開発の流れについては、「回路部分を改良したセカンド・サンプル品の動作を評価した後、これの量産チップを最終的に採用することになるだろう。一方で、当社独自の機能を実装するためのファームウエアを開発する」(CEATEC JAPAN 2008の東芝ブースの説明員)という。製品開発の段階としては、ほぼ最終段階まで進んでいるようだ。

 60GHzで動作するSi(シリコン)CMOSチップを民生用途向けに量産した事例はこれまでに無い。それゆえ、量産時の歩留まり率が低いのではないか、この結果チップ・コストが高価になるのではないかと不安視する声がある。これに対して、米SiBEAM社のPresident & CEOであるJohn E. LeMoncheck氏は、「民生機器に受け入れられるチップ・コストに抑えられる見通しが明確にあったからこそ、市場に参入した。チップの耐久性や信頼性についても、顧客の要求を満たすようにかなり厳しい試験を実施する」と、問題が無いことを強調した。

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