注目集める印刷エレクトロニクス、nano tech 2009が開催:プロセス技術 印刷エレクトロニクス(3/3 ページ)
「nano tech 2009」では、トランジスタ、メモリー、電池、液晶パネル、プリンタなど幅広い分野で印刷エレクトロニクスの新技術が披露された。
1flのインク滴を吐出可能
SIJテクノロジは、1fl(フェムトリットル)という微量のインク滴を吐出可能なインクジェット装置を展示した(図7)。同社が「スーパーインクジェット(SIJ)装置」と呼ぶものだ。「従来方式に比べて1/1000の体積のインク滴を吐出できる。インクジェット技術としては業界最高レベルである。既存の一般用途向けインクジェット装置では、最少液滴量は1pl程度である」(同社)。
1flというインク量は、印刷前のインク滴の直径で0.5μm、印刷媒体に載ったドットの直径では5μm以下に相当する。「このインクジェット装置を使えば、常温環境下の大気中で、数μmの線幅の配線パターンを、前作業無しで直接、基板に作れる」(同社)とメリットを説明する。導電性高分子や金属微粒子などを含んだインクが使える。しかも、粘度が高いインクも吐出可能である。配線パターンやエッチング・レジストの印刷、カラー・フィルタの製造、液晶ディスプレイの配向膜の塗布など幅広い用途に向ける。
図7 印刷エレクトロニクス用プリンタ (a)は展示したインクジェット装置。(b)はガラス基板上にAg(銀)インクで立体端子を成形した様子。端子の直径は10μmで、端子間隔は100μm、高さは40μmである。
このほか、立体構造を印刷で作成できることも特徴として訴求する(図7(b))。「例えば、多層配線の接続用バンプを印刷で形成可能だ」(同社)。微量のインクを吐出できれば、印刷後の乾燥が早い。しかも、粘度の高いインクが使えることから、立体構造の作成が可能になった。有機EL素子や有機半導体に対する応用も視野に入れる。
インクを吐出する仕組みは、「圧電素子を使うピエゾ方式やインク液を加熱するバブルジェット方式といった従来方式とまったく異なる」(同社)。詳細は明らかにしないものの、基本的には、帯電させたインクを「F=qE」の式で表される静電引力で動かす。電界のかけ方やノズルの形状に工夫があるようだ。外形寸法は11cm×7cm×6cmで、手のひらに載る大きさである。電源電圧は5V、消費電力は約20Wである。この装置そのものは、すでに産業技術総合研究所が2008年10月に技術発表していた。SIJテクノロジは、産業技術総合研究所から技術移転を受け、製品化への取り組みを進めていた。2009年7月に販売を開始する予定である。
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