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第3回 回路はすべてオームの法則から(後編)Analog ABC(アナログ技術基礎講座)(2/2 ページ)

今回は実際に、抵抗(R)やインダクタ(L)、コンデンサ(C)の直列回路や、並列回路のインピーダンスを考察し、そこに現われる現象を調べてみます。

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共振時のZの不思議

 共振時のインピーダンスZが、ゼロになったり、インダクタやコンデンサそのものの値を超えて無限大になったりするのを不思議に感じるかもしれません。そこで、簡単な絵を使って、感覚的な説明をしたいと思います。

 図2(a)を見て下さい。直列回路の共振時は、インダクタとコンデンサが接続されている点(図中の黒い点)の電圧が上下に共振周波数で振動します。この振動に伴って、流れる電流値(図中の赤の矢印)が変わりますがインダクタとコンデンサに印加する電圧の合計値(図中の青い破線)は変化しません。電流の変化量に比べて電圧の変化量が小さいことは、オームの法則によってインピーダンスが低いことを意味し、電圧がまったく変化しないとき、インピーダンスはゼロになります。

図1
図2 共振現象の「感覚的」な説明 共振時のインピーダンスZは、直列回路ではゼロに近づき(a)、一方、並列回路では無限大に近づきます(b)。

 一方、並列回路の共振時の様子を図2(b)に示しました。共振時は、インダクタとコンデンサの両方の電圧が上下に共振周波数で振動します。このとき、インダクタとコンデンサは互いに同じ量のエネルギをやりとりします。つまり、電流はインダクタとコンデンサを周回するだけで、外部には出てきません。電圧の変化量に対して、電流に変化量が小さいことは、インピーダンスが大きいことを意味します。電圧が変化しても電流がまったく流れなかったら、そのときのインピーダンスは無限大になります。

 前回紹介したインピーダンスの計算式を使って、実際に直列回路の共振周波数を算出してみましょう。図1(a)に示した直列回路のインピーダンスZは、次の式で表せます。

 実部と虚部が得られれば、直列回路のインピーダンスの大きさ|Z|と、位相角∠Zを計算できます。

 式(3)と式(4)、オームの法則を使えば、電圧と電流の大きさや、それらの周波数に対する変化といった各種特性が計算できます。ここでは、虚部がゼロ、すなわち「1−ω2LC=0」になる場合に注目しましょう。このとき周波数fを、角周波数ω=2πfの関係から計算すると以下のようになります。

 このとき、インダクタのインピーダンスXLはjωL=j√(L/C)、コンデンサのインピーダンスXCは、1/jωC=−j√(L/C)となり、大きさ(絶対値)が等しくなります。回路全体のインピーダンスは(3)式からZ=Rになります。R=0ならば、Z=0になることが数式からも分かります。式(5)で示した周波数が共振周波数です。

 次回からは、アナログ回路を構成する重要な回路を1つずつ紹介します。

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Profile

美齊津摂夫(みさいず せつお)

1986年に大手の通信系ハードウエア開発会社に入社し、光通信向けモジュールの開発に携わる。2004年に、ディー・クルー・テクノロジーズに入社。現在は、同社の常務取締役CTO(最高技術責任者)兼プラットフォーム開発統括部長を務めている。「大学では電気工学科に所属していたのですが、学生のときにはアナログ回路の勉強を避けていました。ですから、トランジスタや電界効果トランジスタ(FET)を使ったアナログ回路の世界には、社会人になってから出会ったといっていいと思います。なぜかアナログ回路の魅力に取りつかれ、23年目になりました」(同氏)。


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